そよ風 (No.428)

東方幸男

2020.03.02

中国の底力

少し時間が取れたので、前に仕事で使った資料を断捨離すべきと、様々なところで入手した情報やデータを整理しています。そうした中、1997年に中国の北京と上海で特許関係の団体と日本の企業の知的財産部門との交流の機会の記録がありました。

 

当時は未だ中国がWIPOに加盟を検討している段階で、国内の法的な整備を図り、特許制度の国際的な調和をどうして行くかを検討している時期でした。


日本は特許制度や運用で100年の歴史があり、日本の企業は先進的な経験を持っていると複数の機関や人々が述べられたのです。中国は特許の歴史が浅いので、日本の企業の第二次世界大戦の戦後の経済的な発展と特許制度との関係に学び、改革開放政策に反映してゆきたいと強調していたのが印象に残っていました。

 

当時の日本は、トップ企業が年間数万件の出願を出すなど、絶頂期で特許調査から、管理、啓蒙活動など余すところなく説明した記憶があります。我々も技術・開発者向けの教育啓蒙や調査環境の整備で苦労していた時期ではあったが、なかなか社内で理解して浸透するまでには相当の時間を要するし、簡単に多くの人々(社員)に波及するまでには苦労していた時期であったので、そのこともお話ししたと思っています。

つまり、そこまで話しても容易には追い付けないし、法整備なども一気に進むとは思えないかなとの感触でした。

 

上海にある大手の企業では、人・モノ・金に次いで、第4の資源として知的財産を挙げて進めているのだと表現していました。話を聞いて、お題目としては理解できるが、なかなかそこまではいかないものだろうと高をくくっていました。ところが20数年後の現在はどうでしょう。

 

アメリカとの貿易経済摩擦にまで発展した中国の底力は大変なモノです。研究開発の重要性と知的財産保護との一体的な推進、つまり研究開発と知的財産管理は表裏一体であることを理解して、日本の経済発展の裏には知的財産があると気づいたら、あとは政府を挙げての改革が一気に身を結んできていることが実感できます。

 

我々の訪問時点での平均年収が一万円程度で、自転車を買うのにも苦労しているといった話を伺っていたのが、現在の生活環境は一変しています。

 

一方、2012年にハルピンで見かけたのですが、博物館の駐車場に止まっていた流動刑務室(移動交番)車の横に、緑色の文字で書かれていた「専利産品 仿造必究」の文字には驚きました。当時はあくまでも姿勢を世の中に示すだけで、取り締まりは未だまだという人もおられましたが、中国での最近の知的財産権保護を巡るルールの整備が急速に進んでいるとの指摘もあります。いよいよ本格的に技術力は先進国並みになり、一部では追い越したとの裏打ちがあるのでしょうか。

 

追い付き追い越されつつある我々の立場は明白です。中国に伍して戦うには開発力向上と、知的財産権をしっかりと確立して行くことが大切であると改めて認識することではないでしょうか。
ハングリーだった昔の日本を懐かしむのは戯言でしょうか?

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