コラム

AI(人工知能)の爆発的進展は
新たな産業革命勃発か

3次から第4次産業革命になだれ込む
技術革新によって社会構造、経済、生活様式まで大変革を起こした過去の世界の産業革命は、
歴史的に第1次から現在の第3次まで3回、勃発したと位置づけられています。
第1次産業革命は、18世紀後半から19世紀初頭にかけてイギリスから波及したもので、
蒸気機関の発明、繊維産業の機械化、石炭採掘の効率化などで生産効率が飛躍的に上がりました。
第2次産業革命は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて電気、化学、鉄鋼産業が拡大し、
自動車の普及、電灯の発明、化学製品の開発など大規模な工業が発展・普及しました。

第3次産業革命は、20世紀後半から21世紀初頭、
つまりいま世界的に進んでいる産業革命を指しており、
コンピュータ技術の発展と普及、インターネットの登場、
自動化技術・ロボットの発展があげられます。
2000年代から本格的に始まったいまの産業革命は、まだ進展途中にありますが、
筆者の分析では今回の産業革命は、
2020年代から飛躍的な革命へと変革してきており、
第4次産業革命へなだれ込んでいくと確信しています。
つまり第3次産業革命から連続的に大革新へとなだれ込み、
第4次産業革命と呼ぶような産業革命が勃発するという「予見」です。
それを起こすのは、AIArtificial Intelligence、人工知能)産業革命です。
この先100年後に今の時代、つまり2020年から2050年ごろの世界の変革を振り返った場合、
間違いなくAI産業革命だったと総括されるだろうと筆者は考えています。

WIPOが予見しているAI産業革命
産業革命は社会構造を根本的に変えていくことであり、
人々の価値観も国家のあり方も文化も変革していくとすれば、
今まさにそれが始まろうとしていると理解しています。
もうすでに始まっているのですが、規則や技術のようにこの時点からという表現は出来ません。
しかしその大変革を起こすのは、AIの驚異的発展が、
学術・研究、教育、産業・ビジネス現場、ネット環境、製造業、文化・芸術など
あらゆる場面を急速に変革しようとしています。
これは人間の意識、考えの在り方をも変えるものであり、
人類の思考を超越するような電子機器類が普及し、
時にはそのツールと手段に人類が振りまわされ、
勝者と敗者に二分されるような国家や社会が出現するような気がします。

WIPO(World Intellectual Property Organization、世界知的所有権機関)は、
その大変革を捉えるように、最近、AIに関する特集(注)を相次いで発表しています。
その解説とデータを元に筆者なりの考えを発信したいと思います。

(注)WIPOAIに関する発表サイト
特許ランドスケープレポート - 生成的人工知能(GenAI)
https://www.wipo.int/web-publications/patent-landscape-report-generative-artificial-intelligence-genai/en/index.html

AI関連特許は中国・インドが急進展
さる7月に発表された調査結果をみると、
最近10年間に
5万4,000件のジェネレーティブAIGenAI)に関する発明(パテントファミリー)が出願され、
このうち4分の1以上が2023年に出願されたとしています。
AIの覇者はアメリカだと筆者は思ってきましたが、驚いたことに
特許に代表される先端技術革新は中国にかわされてしまったと言わんばかりに
WIPOは報告しています。
アメリカは理論的なAI技術を発明しましたが、
それを応用する技術では中国がアメリカと肩を並べ、
あるいは一歩先に行ったという見方もできます。

中国はデジタル化社会に国を挙げて取り組んでおり、
共産党独裁政権はこの政策遂行によく合っていると言われています。
教育改革や知的財産制度改革でも、
中国の政策は継続的でかつ着実に施行していく国家として成功していると思います。

2014年から2023年の間のAI関連特許の出願件数の国別トップは、
中国の38,210件で、2位の米国の約6倍でした。
3位以下は、韓国、日本、インドと続いていますが、
インドの出願年平均成長率は56%で、上位5カ国の中で最も高かったとコメントしています。
つまり中国・インドがAI関連発明では、爆発的な進展を見せていることにWIPOも注目しています。

「ジェネレーティブAIに関するランドスケープレポート」によると、
2023年までの10年間で54,000件のGenAI発明を文書化しており、
そのうち25%以上が昨年だけで出現しています。
GenAIは、ユーザーが
テキスト、画像、音楽、コンピューターコードなどのコンテンツを作成できるようにし、
ChatGPT(OpenAIの文書生成AI)、
GoogleのGeminiGoogleの生成AIサービス)、
BaiduのERNIE Bot(バイドウのAIチャットボット) などの
チャットボット(チャットでの質問に自動で返答するプログラム)を含む、
さまざまな工業製品や消費者向け製品を強化すると解説しています。

筆者も昨年からChatGPTの愛用者になっています。
無料公開されているChatGPTと有料会員ユーザーと両方を使っていますが、
ほとんどは過去のデータ分析に使っています。
驚くほど速く、確実性が高く、執筆データ処理などの効率化では、非常に役立っています。
ただ、まったく役立たない記述や、結果をさも権威ある報告のように出してくることもあるので、
相当程度の未熟さは残っています。
しかしデジタル技術は退歩することがないので、
着実に進歩していき、その速度は爆発的に進展するでしょう。

直近10年間にGenAIの発明で中国はアメリカの約6倍にあったとは驚きましたが、
インドが年平均成長率が56%だったというのも驚きです。
インドは急速にAI先端国家へ入ってきており、
今後、インドが国家としてどのように変貌していくのか注目したいと思います。

中国企業・大学が上位を独占しているAI特許出願
WIPOのAI特許出願の国別から出願者別のトップ20ランキングを見たのが次の表です。
企業と大学に二分されますが、
上位20のうち、中国13、アメリカ4、日本2、韓国1で、圧倒的に中国が優位に立っています。

本社ビルをデザインした中国・深圳市のテンセントホームページ
(https://www.tencent.com/en-us/index.html/)

(WIPO Patent Landscape Report - Generative Artificial Intelligence (GenAI)をもとに筆者が作成)国別内訳数
(WIPO Patent Landscape Report - Generative Artificial Intelligence (GenAI)をもとに筆者が作成)

 

AIは
「ライフサイエンス、製造、輸送、セキュリティ、通信などの業界にすでに広がっている」
WIPO報告書は解説しています。
このような産業分野でのAI技術の発展は、仕事や生活様式の変革にも波及し、
遊び方や芸術分野への応用、そして人々の考え方や価値観にも
大きな影響を与えることにつながります。
AIの応用でビジネスや企業経営、商品、サービスなどが連携して
収益構造を構成していくことは好ましいということになりますが、
すべての人々を幸福にするのかどうか。
人間としての存在価値をどこに求めていくのかという課題も出ています。

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