そよ風 (No.424)

東方幸男

2020.01.06

創造性

長い会社での勤めの中で、一番印象に残る仕事は1970年代に携わったコンピュータを使った特許の管理システムの開発でした。今から見ればそんなことしていたのかと思われるでしょうが、当時の事務作業の管理は分厚い大福帳などともいった製本された原簿への記帳が唯一の情報だったのです。

 

特許庁などへの応答には全て期限がついており、この期限管理を怠ると庁への回答の期限を切ってしまい、重要な権利を取ることができなくなるということで、ピリピリしていたのです。さらには業務の管理や戦略を立てるには分厚い紙の原簿をひっくり返し「正」の字を書いてデータ(統計)を取っていました。

 

そこで、何とかこうした作業が人力を使わないでできないかという要求が出て、コンピュータ化を推進する切っ掛けになったのです。紙の原簿を元に発明の名称や発明者の所属などを調べ転記することでさまざまな社内への通知もなされていました。

 

コンピュータ化に伴いこうした作業を洗い出し、なぜ原簿がいるのか、なぜ期限簿は必要か、なぜこんな形式の通知を出さねばならないのかを、基本的な問題、基本的な要求に、それぞれが果たすべき機能を改めて問い直し、全く新しい思想でコンピュータシステムを作りました。大袈裟にいえば知的財産管理のあり方を多面的に検討した結果開発したシステムでした。

 

このコンピュータ化の経験が、その後の私の仕事の進め方に大きな影響を与えました。何しろ営々と諸先輩が長い間築き上げてきた作業を、一から問い直し、何のためにやっているかを考えたのです。「何で」「何のために」とその目的や各書類や作業の存在理由を再考して見ると、全く別のやり方や、データの処理の仕方が浮かんでくるのです。そこに人手ではなくコンピュータにやらせるべき作業がクローズアップされてきたのでした。後はどのように処理すべきかを考えて行くことで、全く新しい仕組みや、新しい重宝な機能が提供できたのです。

 

コンピュータ化には多大な投資が必要でした。事務に係わっている人を全て削除にしても賄えない人件費にも相当する金額です。これは合理化(首切り)で人手を割かねばならないというとんでもないシステムを作ることにもなり兼ねませんでした。そこで投資/効果算定も一工夫しました。今までの仕事は合理化することはもちろん、人手でやっていたら、何人掛かっても実現できない便利な機能を盛り込み効果を算出したのです。
日本人の独創性が問われる話を最近耳に入ります。学校教育でも独創性を育む取り組みがなされています。それぞれの様々な行動や日常のフトしたこと、先人が積み上げて進めて来た業務、仕事やサービスを、ちょっと見直す。そして先人の知恵を生かし、さらにその先を行く、新たな便利な仕組みを考える。

 

今やっていることは何のためにしているのか、その目的は何のためなのだろうかと見直す。こんなことも時々やられては如何でしょう。

 

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