『商標法』第六十四条第一項
「これまでの三年間」の起算点に関する探究
馮超 森康晃 王茜
泰和泰(北京)法律事務所
中国の『商標法』第六十四条第一項には
商標権利侵害と訴えられた者により登録商標を使用していないとの賠償を免ずる抗弁条項が規定され
具体的には、
「登録商標専用権者が賠償を請求し、
権利侵害と訴えられた者により登録商標専用権者が登録商標を使用していないとの抗弁がなされたときは、
人民法院は、登録商標専用権者に、
これまで三年以内にその登録商標を実際に使用している証拠を提供するよう求めることができる。
登録商標専用権者は、これまで三年以内に、当該登録商標を実際に使用していることを証明できないとき、
又は侵害行為によりその他の損失を受けたことを証明できないときは、
権利侵害として訴えられた者は、損害賠償の責を負わない。」になる。
しかし、「これまでの三年間」の起算点を明確に規定した具体的な司法解釈がないため
現在の理論と法曹界の理解と適用には大きな隔たりと論争がある。
各地の法院の認定基準の違いは、事件の判決結果に直接影響し同事件の判決が違うことになってしまう。
一、現在の司法実践における「これまでの三年間」の起算点に対するいくつかの観点
(一)「起訴日」を起算点とする
(2020)蘇民申5943号にて※1
宿遷市洋河鎮貴賓酒業有限公司と
青花磁酒業集団股份有限公司、昆山市周市鎮陸楊億家利スーパーの
商標権侵害紛争の申立、申請民事裁定書において
江蘇省高級人民法院は「これまでの三年間」の起算点を「起訴日」と確定した。
法院は具体的に以下のように述べている。
「『中華人民共和国商標法』(2013年改正)第六十四条第一項には
登録商標専用権者が賠償を請求し、権利侵害と訴えられた者により
登録商標専用権者が登録商標を使用していないとの抗弁がなされたときは、
人民法院は、登録商標専用権者に、
これまで三年以内にその登録商標を実際に使用している証拠を提供するよう求めることができる。
上記の法律規定からわかるように、
「これまでの三年間」とは、一般的に、登録商標専用権者が訴訟を提起した最初の三年間をいう。
本件において
青花磁酒業公司は2018年7月に一審法院に訴訟を提起し、
貴賓酒業有限公司は2018年11月に青花磁酒業公司が
係争第8699703号登録商標を使用していないとして抗弁したので
青花磁酒業公司は
これまでの三年間に当該登録商標を実際に使用していた証拠を提供しなければならない。」
(二)「立件日」を起算点とする
在(2022)京民再72号※2北京燕京国際旅行社有限公司の
商標権侵害紛争再審民事判決書において、
北京市高級人民法院は、
「これまでの三年間」の起算点を「一審事件の立件日」と確定した。
法院は具体的に以下のように述べている。
「本件において北京燕京公司は、二審法院の商標権侵害に関する認定に異議はないが、
二審法院がその三年間の不使用抗弁を支持しなかったことに異議がある。
北京燕京公司は再審期間中、燕京智匯公司の係争登録商標が
その一審の提訴日から三年前(すなわち、2015年10月26日~2018年10月25日)に
商標法上の使用を行っておらず、
商標法第六十四条の規定に基づき、賠償責任を負うべきではないと主張した。
これに対して当院は、
一審事件の立件日が2019年1月7日であることにより、
当該日は燕京智匯公司の請求権の基礎の起算日であり、
したがって、北京燕京公司が係争登録商標の三年間不使用抗弁を主張する期間は、
2016年1月8日から2019年1月7日まででなければならないと認定した」
(三)「権利侵害行為日」を起算点とする
(2018)粤民終1741号※3江中薬業股份有限公司、
広東欧莱氏生物科技有限公司の商標権侵害紛争の二審民事判決書において
広東省高級人民法院は
「これまでの三年間」の起算点を「権利侵害行為日」と確定した。
法院は具体的に以下のように述べている。
「商標法第六十四条の「これまでの三年間」の認定は、
立法意図の実現を目的とし、
商標権者と権利侵害行為者との間の利益のバランスを重視すべきであるため、
「これまでの三年間」を
「権利侵害行為が発生する前の三年間」と認定すべきである」。
二、「権利侵害行為日」を起算点とする合理性の分析
以上のいくつかの異なる裁判の観点を見てみると
「これまでの三年間」の起算点を権利侵害行為日と認定することは
より合法的で合理的であると筆者は考える。具体的には以下のように分析する。
(一)「権利侵害行為日」を起算点とすることが司法裁判規則における主流の観点であり
多くの発効判決はいずれも「これまでの三年間」の起算点を
「権利侵害行為の発生日」と定めている。
同時に、最高人民法院も複数の裁定において
「権利侵害行為日」を起算点とする判決を維持した。
筆者の検索結果に基づいて、
『商標法』第六十四条第一項の「これまでの三年間」の起算点を
「権利侵害行為の発生日」に確定することが
現在の司法裁判規則における主流の観点であり、
すでに多くの発効判決がこの認定を下している。
同時に、最高人民法院も複数の裁定において
「権利侵害行為の発生日」を起算点とする判決を維持した。
一部の先行判例は以下のように列挙されている:
判決/裁定書 | 審理法院 | 判決/裁定抜粋 | まとめ |
(2021)最高法民申3058、3111号※4 | 最高人民法院 | 商標法六十四条に規定する登録商標を三年間使用していない権利侵害で訴えられた者が賠償責任を負わない三年間は、権利侵害行為が発生した時を起算点としなければならない。権利侵害行為が発生した前の三年間に、登録商標の権利者が登録商標を使用していない場合、権利侵害で訴えられた者は賠償責任を負わない。 | 最高人民法院は、『商標法』第六十四条「これまでの三年間」の起算点は「権利侵害行為の発生日」と認定した。 |
(2019)最高法民申1038号※5 | 最高人民法院 |
国瑞商行は、係争商標がこれまでの三年間は実際に使用されていなかったと主張した。調査の結果、二審法院が採用した第619号判決は、ミシュラン社の第4649793号商標(即ち、本件係争商標)が長期の使用と宣伝を経て、関連公衆の間で比較的高い知名度を有するブランドとなっており、権利侵害で訴えられた者の行為はミシュラン社の第4649793号商標の登録商標専用権を侵害していると認定し、権利侵害で訴えられた者にミシュラン社に2万元の賠償を命じる判決を下した。当院は、第619号判決は2001年に改正された商標法に基づいて下されたものの、当該判決は係争商標の知名度を認定する際に係争商標の使用状況を考慮しており、当該判決が係争商標の知名度状況を当該事件の訴えられた侵害行為の発生時(すなわち2014年1月2日)の事実状態と認定し、本件の訴えられた侵害行為の発生時期即ち2015年5月、三年未満である。したがって、二審法院は第619号判決とミシュラン社が提出したその他の証拠とを合わせて、ミシュラン社が係争商標に対して実際の使用行為を有すると認定したことは、不当ではない。 したがって、一審、二審の法院は、係争商標について訴えられた権利侵害行為が発生する前の三年間に実際に使用したという事実認定は不当ではない。 |
最高人民法院は、「権利侵害行為の発生日」の前の三年間に、登録商標の権利者(ミシュラン社)が係争商標を実際に使用したので、権利侵害で訴えられた者(国瑞商行)は『商標法』第六十四条第一項に基づいて賠償責任を負わなければならないと認定した。 |
(2017)最高法民申663号※6 | 最高人民法院 | 当院はこれについて、『中華人民共和国商標法』第六十四条に、登録商標専用権者が賠償を請求し、権利侵害と訴えられた者により登録商標専用権者が登録商標を使用していないとの抗弁がなされたときは、人民法院は、登録商標専用権者に、これまで三年以内にその登録商標を実際に使用している証拠を提供するよう求めることができると考えている。登録商標専用権者は、これまで三年以内に、当該登録商標を実際に使用していることを証明できないとき、又は侵害行為によりその他の損失を受けたことを証明できないときは、権利侵害として訴えられた者は、損害賠償の責を負わない。 ……次に、製品の実物の写真、広告宣伝写真のコピー等の内容は、実際の使用時間を示しておらず、係争商標が訴えられた侵害行為が発生する前の三年間に有効に使われることも証明できない。 |
最高人民法院は、『商標法』第六十四条第一項に基づき、権利侵害で訴えられた者が損害賠償責任を負う必要があるか否かを審査する際に、登録商標の権利者が「権利侵害行為の発生日」前の三年間に有効に使用しているか否かを審査しなければならないと認定した。 |
(2021)粤民再125号※7 | 広東省高級人民法院 |
中国の『商標法』第六十四条第一項には、「登録商標専用権者が賠償を請求し、権利侵害と訴えられた者により登録商標専用権者が登録商標を使用していないとの抗弁がなされたときは、人民法院は、登録商標専用権者に、これまで三年以内にその登録商標を実際に使用している証拠を提供するよう求めることができる。登録商標専用権者は、これまで三年以内に、当該登録商標を実際に使用していることを証明できないとき、又は侵害行為によりその他の損失を受けたことを証明できないときは、権利侵害として訴えられた者は、損害賠償の責を負わない。」と規定されている。本件では、訴えられた侵害行為の発生時間帯が2017年9月から2017年12月であるため、当該権利侵害行為の継続期間の前の三年間に新覇公司は係争商標を実際に使用したか否かを審査すべきである。 これについて当院は、(2017)京73行初6555号行政判決が認定した事実に基づき、新覇公司は2015年8月15日~2017年8月14日の期間に係争商標を他人に使用を許諾しており、2015年9月17日に係争商標を使用したイヤホン商品の淘宝販売記録があると判断した。また、新覇公司は本件においても、関連商品の淘宝販売記録を別途複数提出しており、関連商品はいずれも係争商標を使用しており、使用された商品分類も係争商標の使用が査定されたイヤホン、スピーカー等の商品分類であり、関連する販売時期も本件の被疑侵害行為が発生する前の三年間の要求に合致している。そのため、新覇公司はすでに訴えられた権利侵害行為が発生する前の三年間に係争権利商標を使用したので、新裕公司の三年間の未使用抗弁は成立せず、なお経済的損失を賠償する責任を負わなければならない。 |
広東高院は、「権利侵害行為の発生日」の前の三年間に、登録商標権利者(すなわち新覇公司)が係争商標を実際に使用したので、権利侵害で訴えられた者(すなわち新裕公司)は『商標法』第六十四条第一項に基づき賠償責任を負わなければならないと認定した。 |
(2019)粤民再235号※8 | 広東省高級人民法院 |
『中華人民共和国商標法』(201三年改正)第六十四条第一項は、「登録商標専用権者が賠償を請求し、権利侵害と訴えられた者により登録商標専用権者が登録商標を使用していないとの抗弁がなされたときは、人民法院は、登録商標専用権者に、これまで三年以内にその登録商標を実際に使用している証拠を提供するよう求めることができる。登録商標専用権者は、これまで三年以内に、当該登録商標を実際に使用していることを証明できないとき、又は侵害行為によりその他の損失を受けたことを証明できないときは、権利侵害として訴えられた者は、損害賠償の責を負わない。」と規定されている。 本件は、訴えられた侵害行為が一審の起訴時まで継続したことを示す証拠がないので、本件の訴えられた行為が発生した2016年3月21日より前に三年間を推算するべきである。 |
本案において、広東高院は、『商標法』第六十四条第一項に基づいて、権利侵害で訴えられた者が損害賠償責任を負う必要があるか否かを審査する際に、登録商標の権利者が「権利侵害行為の発生日」の前の三年間に有効に使用しているか否かを審査すべきであると認定した。 |
(2019)津民終565号※9 | 天津市高級人民法院 |
中国の『商標法』第六十四条第一項には、「登録商標専用権者が賠償を請求し、権利侵害と訴えられた者により登録商標専用権者が登録商標を使用していないとの抗弁がなされたときは、人民法院は、登録商標専用権者に、これまで三年以内にその登録商標を実際に使用している証拠を提供するよう求めることができる。登録商標専用権者は、これまで三年以内に、当該登録商標を実際に使用していることを証明できないとき、又は侵害行為によりその他の損失を受けたことを証明できないときは、権利侵害として訴えられた者は、損害賠償の責を負わない」が規定されている。 本件において、謙晟公司は有限公司関口が係争商標を使用していないと抗弁で主張した。これについて、当院は、第11427247号商標の実際の使用状況について、本件の二審期間中に、有限公司関口が中国国内のフランチャイズディーラーの2015年~2020年の販売領収書及び天猫、京東の公式ライセンス店舗の運営情報のスクリーンショットを提出しており、上記の証拠は本件の訴えられた侵害行為の実施前の三年間に有限公司関口が係争商標を使用した時期をカバーし、一審期間中に有限公司関口が提出した2015年~2018年の中国国内ブランディング活動の報告書と合わせて、上述の証拠は完全な証拠チェーンを形成することができ、有限公司関口がこれまでの三年間に第11427247号商標を実際に使用したと認定することができる。 |
天津高院は、『商標法』第六十四条第一項に基づいて、権利侵害で訴えられた者が損害賠償責任を負う必要があるか否かを審査する際に、登録商標の権利者が「権利侵害行為の発生日」の前の三年間に実際に使用しているか否かを審査しなければならないと認定した。 |
(2018)粤民終1741号※10 | 広東省高級人民法院 | 商標法第六十四条の「これまでの三年間」の認定は、立法意図の実現を目的とし、商標権者と権利侵害行為者との間の利益のバランスを重視すべきであるので、「これまでの三年間」を「権利侵害行為が発生する前の三年間」と認定すべきである。 |
広東高院は、『商標法』第六十四条第一項に基づいて、権利侵害で訴えられた者が損害賠償責任を負う必要があるか否かを審査する際に、登録商標の権利者が「権利侵害行為の発生日」の前の三年間に実際に使用しているか否かを審査しなければならないと認定した。 |
(二)「権利侵害行為の発生日」を起算点とすることは、
法律の立法目的と立法の本意により合致する。
法律の理解及び適用については、文字の意味から理解するだけでなく、
法律の本質及び立法目的を総合的に考慮すべきであり、
同時に商標権者と権利侵害行為者との間の利益のバランスを重視すべきである。
1.「権利侵害行為の発生日」を起算点とすることは、
『商標法』の立法目的及び立法の本意に合致する。
まず、賠償請求権の基礎は権利侵害による損失が存在することである。
一方、権利侵害行為が損失をもたらすか否かは、
主に権利侵害行為の発生時における各当事者の商標使用状況に左右される。
権利侵害で訴えられた者の賠償の前提は、
権利侵害で訴えられた行為が発生する前に、係争権利商標はすでに使用を通じて
商品又は役務の出所を区別する機能を果たしており
それによって商業信用等の法的保護を受けるべき利益がすでに生じており、
権利侵害で訴えられた行為は権利商標に便乗し
形成された商業信用を盗用することによって不法な利益を獲得し、
権利者の形成された商業信用に損害を与え、商標権利者の損失を招くことにある。
言い換えれば、
関連公衆が混同、誤認を生じるか否かを判断する際には、
関連公衆が原告の権利商標と権利侵害で訴えられた標識とを
混同するか否かを重点的に考察すべきである。
したがって、権利侵害の判断の鍵は、権利侵害行為の発生時点において
権利商標が実際に使用されているか否かであり、
使用されていれば商品又は役務の出所を識別する機能を発揮することができ、
権利侵害で訴えられた標識に混同が生じ、
損失が生じる結果をもたらす可能性が高い。
一方、立件又は起訴の時点は、
原被告の商標の実際の使用及び混同をもたらす可能性があるか否かと直接関係がない。
したがって、「これまでの三年間」の起算点は、
実際に混同が生じる可能性のある時点、
すなわち原告が主張する権利侵害行為が発生した時点から計算し、
三年間逆算して権利商標の実際の使用状況を考察しなければならない。
上述の観点はすでに多くの裁判文書で認められており
例えば、広東省高級人民法院による(2018)粤民終1741号江中薬業股份有限公司、
広東欧莱氏生物科技有限公司の商標権侵害紛争において
法院は、「権利侵害行為の発生日」を起算点とすることが
『商標法』の立法目的及び立法の本意に一層合致すると認定した。
また、法律は確実性規範であり
当事者の権利、義務及び相応する法的結果について明確に規定し、
当事者にその行為の結果について十分な予断を持たせなければならない。
これまでの三年間を権利侵害行為発生の前の三年間と確定した場合、
行為者は行為前の状況に基づいて自身の行為の結果を効果的に予断することができる。
しかし、これまでの三年間を起訴前と確定すれば
行為者の行為結果は侵害行為発生後の事実によって変化する可能性があり
これは明らかに法律の確実性の要求に合致しない。
最後に、立法目的と法律効果から見ると
これまでの三年間を権利侵害行為発生前の三年間と確定することは
商標権者に速やかに商標を使用するよう促すことができる一方で
商標権者が商標を長期間放置して使用しておらず、
他人が当該商標を使用していることを知った後に
不正な利益を得るために嘘の商標使用をすることを防ぐこともできる。
したがって、
これまでの三年間を権利侵害行為発生の前の三年間と確定することは、
商標の使用を奨励し、商標資源を活性化するのに有利であるだけでなく、
商標権者が登録商標を利用して不正な行為をすることを効果的に防止することができる。
以上をまとめると、
「これまでの三年間」の認定は、立法意図の実現を目的とし、
商標権者と権利侵害行為者との間の利益のバランスを重視すべきであるため
「これまでの三年間」を「権利侵害行為が発生する前の三年間」と認定すべきである。
また、『商標法』の商標取消制度に対する規定は
『商標法』第六十四条の「これまでの三年間」の起算点を
「権利侵害行為の発生日」から起算すべきという合理性を側面的に証明することができる。
先ず『商標法』第五十五条第二項の規定に基づき、
「取り消された登録商標は、商標局が公告し、当該登録商標専用権は公告日より終了する。」
このことから、取り消された登録商標は商標局が公告するまでは依然として有効であり、
かつ商標局が係争登録商標の取消を公告したとしても、
係争登録商標は公告日から終了し、終了するまでは依然として有効であることがわかる。
したがって、登録商標取消公告日以前に発生した権利侵害行為について
被告は依然として権利侵害責任を負う必要がある。
言い換えれば、原告の権利商標が権利侵害で訴えられた行為が発生する前に
長期的かつ継続的に使用されたことによって形成された商業信用は、
後続の権利商標が取り消されたことによって、
以前に形成された商業信用が存在しなくなることはない。
その次、『商標法』第五十条の規定に基づき、
「登録商標が取り消され、無効宣告され、
又は期間が満了しても更新されない場合には、
取消、無効宣告又は抹消の日から1年以内は、
商標局は当該商標と同一又は類似する商標登録出願について、許可しない。」
このことから、登録商標は取消公告される前に既に使用されており、
市場において多かれ少なかれ一定の影響を及ぼしている。
市場経済秩序を維持し、消費者の利益を保護し、
不必要な誤解及び損失を防止するために登録商標が取り消されたとしても、
登録商標が取り消される前に形成された商業信用に対して
一定の保護を与えなければならないので、
商標法第五十条は一定の期間内に当該商標と同一
又は類似する商標登録出願に対して一定の制限を設けている。
2.「権利侵害行為の発生日」を起算点とすることは、『民法典』の関連規定に合致する。
『民法典』第1184条には
「他人の財産を侵害した場合、
財産損失は侵害された時の市場価格又はその他の合理的な方式で計算する」と規定されている。
この規定に基づき、財産損失の計算は損失発生時に基づいて計算しなければならない。
商標権は知的財産権であり、同様に財産権の一種であり
商標権侵害紛争については、
権利侵害行為が発生した時点が商標権利者の損失が発生した時点である。
したがって、「権利侵害行為の発生日」を起算点とすることは
同様に『民法典』の関連規定に合致する。
以上のように
「権利侵害行為日」を『商標法』第六十四条の「これまでの三年間」の起算点とすることは
すでに司法裁判規則における主流の観点であり、
すでに多くの発効判決がこの認定を下している。
これと同時に、「権利侵害行為の発生日」を起算点とすることは
『商標法』の立法目的及び立法の本意に合致するだけでなく
『民法典』の関連規定にも合致する。
------------------------
※1:(2020)蘇民申5943号民事裁定書
※2:(2022)京民再72号民事判決書
※3:(2018)粤民終1741号民事判決書
※4:(2021)最高法民申3058、3111号民事裁定書
※5:(2019)最高法民申1038号民事裁定書
※6:(2017)最高法民申663号民事裁定書
※7:(2021)粤民再125号民事判決書
※8:(2019)粤民再235号民事判決書
※9:(2019)津民終565号民事判決書
※10:同脚注3