進化する日本人・劣化する国家と組織
エミー賞受賞と大谷の快挙に思う
アメリカ・テレビ界の最高賞であるエミー賞で、
ドラマ「SHOGUN 将軍」の主演男優でプロデューサーを務めた真田広之さん、
主演女優のアンナ・サワイさんらが
作品賞を始め主要18部門と日本人9人が受賞しました。
いずれも日本にとって史上最多記録であり快挙です。
「SHOGUN 将軍」は、ハリウッド製の歴史劇としてもディズニープラスが世界に配信しており
大ヒットして話題になっていました。
まさにその評価を裏付けた格好となりました。
日本の映像・演劇の力量は、黒澤明ら多くの映画監督による名画制作で、
演劇では演出家の鈴木忠志らが海外で高く評価されてきました。
このように先端を走る芸術家はすでに、
世界トップの舞台で活躍していることが証明されています。
この原稿を書いているさなか、
アメリカ・メジャーリーグの大谷翔平が「51ホームラン・51盗塁」という
前人未踏の大記録を樹立したニュースが届きました。
世界の大舞台で日本人が活躍することに勇気づけられ誇りに思わずにいられません。
日本人とはどんな民族なのか
日本人は、戦後の廃墟から立ち上がり
高度経済成長期を実現して21世紀へと突入していきました。
当初の勢いがそのまま21世紀へと引き継がれていくと
誰もが思った時代もありました。
しかし振り返ってみると、
この25年間・4半世紀の日本は、停滞したままであり
世界で発表されている主な経済・科学・教育指標は下降線を辿るばかりです。
一体、何が原因でこうなったのでしょうか。
日本人の資質が年々、進歩してきたことをもうちょっと書いてみます。
一番分かりやすいのは身長の伸びです。
表で見るとおり
この70年間に男性で11センチ以上、女性で8.5センチも伸びました。
体格が徐々に大きくなってきたことは、
身近にいる日本人の年齢階層別の体格を見ても明らかです。
この体格向上は、
世界で活躍するようになったスポーツの世界が最もわかりやすい指標になります。
体力で劣っていた日本人が、
いまや多くの競技で欧米人と互角に闘える時代になったのです。
スポーツの強弱は、絶対的な評価になります。
勝つか負けるか。
そこに恣意的な要素が紛れ込むことはなく、
公平で絶対的な評価で決します。
この夏、多くの感動を見せてくれたパリで開催のオリパラ大会でも
日本人選手の活躍を「見て・聞いた」ほとんどの日本人が、
感動したのではないでしょうか。
表で見ると、日本人が活躍した領域・種目が
旧来の種目とは明らかに変わってきています。
表の中で赤字で示した競技は、
かつての日本人はメダルにはるか届かない位置にいたものでした。
話題に沸いた女子やり投げの金メダルは、
まさに体格に勝る欧米人に歯が立たない競技でした。それが金メダルです。
体格が良ければ勝負にも勝つということはあり得ません。
大半が技術と鍛錬が勝負を決めるものであり、
そこに運・不運が多少、加味されるものでしょう。
パリ・オリンピックの日本人メダル獲得数
ブレイキンって分かりますか?
この表の赤字で示したブレイキン、皆さんはどんな競技か分かるでしょうか。
年配者が見ると「ガキの遊び」のような競技が
オリンピック種目になっています。
スケボー、スポーツクライミングもそうです。
オリンピック競技も進化してきているのです。
ブレイキンは、勝ち負けをかけた競技ですが、
ストリートダンスに創造性を加えたパフォーマンスで競うもので
表現力を重視する競技です。
言葉で説明しても分からないと思いますが、
競技を見て筆者は感心してしまいました。
是非、YouTubeで見てください。
このような大舞台で、
日本人の女の子が金メダルを取るという快挙は素晴らしいと思いました。
体格・体力だけでなく創造性を発揮する
21世紀型のスポーツの世界でも実力を見せてくれたのです。
プロスポーツで活躍する日本人
次の表は、プロスポーツで国際的に活躍する主な日本人選手の表です。
これは筆者が作成したものであり、すべて網羅したものではないので
抜けていると指摘を受ける選手がいるかもしれません。
ここでも体格・体力で追いついてきた日本人が、
技術でも互角以上の力量を発揮できるようになったことを証明しています。
ここではこれ以上、説明する必要はないでしょう。
見ての通り、技量を発揮した選手の活躍を見て聞いて、
私たちは勇気をもらい誇りを感じるのではないでしょうか。
次の表は、芸能・芸術の世界で、国際的に活躍してきた人のリストです。
映画だけのリストを作る必要がありますが、
ここでは宮崎駿のアニメだけ記載しました。
国家像を語らない自民党総裁選
いま世間を賑わせている自民党総裁選ですが、
それは実質的に内閣総理大臣を決めることになるための選挙であり
注目しない訳にいきません。
9人の候補者の公約が連日のようにメディアで取り上げられていますが、
どの候補も国家像を明確に語っていません。
掲げている公約は、個別の政策課題であり
どう見ても選挙区に向かってアピールしているとしか見えません。
個別政策と言っても「科学」とか「教育」を語っている候補者はいません。
デジタル産業革命が進行している時代に、
その革命と最も関係のある科学と教育抜きにして、国家がどう取り組むのか。
その国家像を語っていないのです。
言葉だけの美辞麗句を並べただけでは政策を訴えたことにはならず、
選挙カーからの連呼と同じことではないでしょうか。
日本企業は、円安の恩恵を受けて史上最高の利益を上げています。
その利益の多くが内部留保になり、その財がたまりにたまっていまや、
日本国家の年間予算のほぼ2年分になっています。
この20年間止まっていた賃金にようやく回してきましたが、
世界主要国の平均賃金に比べるとまだ低賃金と言わざるを得ません。
組織としての企業を見ると、技術で優れていても
企業体として組織としては先端を走っているように見えません。
かつて半導体や携帯電話で先端を走っていながら、
その後見る影もなく後退し続けてきました。
これは経営の失敗であり、
日本は単に「部品屋」に成り下がってしまったのではないでしょうか。
個人として進化しても組織として停滞するのでは、国家的損失になるでしょう。