コラム

世界の街角から見た日本
世界一周船旅の見聞記 その2

Wi-Fi接続も出来るけれども
PEACE BOAT船旅は世界一周とうたっていますが、
実際は北半球の限られた国を駆け足で回るものです。
今回はスエズ運河周辺の紛争地帯を避けて、アフリカ大陸の最南端を迂回して、
インド洋から大西洋へ抜け、北上して北極海を回りこんで
アメリカ大陸へ至るコースになっています。

ヨーロッパのイタリア、スペイン、フランスなどには寄港しないで
素通りすることに不満はありましたが、
次回のチャンスといっても人生最初で最後の船旅ですから、そうも言っていられません。
寄港して上陸する国や都市は限られており、
それをカバーするためのオーバーランドツアーという特別ツアーが用意されていました。
筆者はその仕組みをよく知らないで乗船したので、
長い時間、船の中だけで生活することになりました。

船にWi-Fi接続すれば、リアルタイムで日本とつながるし、
ネット情報も国内にいるときと同じように接することも出来ます。
しかし、接続料金が高いのです。
1ギガ約1500円ですが、
ネットなどから勝手に入ってくる情報が知らない間に購入したWi-Fi接続量を消費していき、
あっという間になくなってしまうことがあります。
時たま寄港する都市に降りて、タダで使えるWi-Fi接続を探して、
レストランやコーヒーショップをハシゴすることもたびたびでした。
しかしそれもまた、思わぬ出来事に出くわすこともあり、
知らない国と社会に踏み出していく楽しみにもつながっています。

貧乏になった日本人と日本国家
世界のどこへ行っても物価が高いのに驚いています。
お土産物屋で物色をするとき、何よりも先に値札を見るのが普通ですが
上陸して散策している乗船客の行動をみていると
スマホの計算画面を片手に値段交渉する風景がよく見られました。
むろん、そんな風景はいつでもあるのですが、
買い物後に食卓などでの「報告会」になると、何でも高い値段の話になります。

話を聞いて感じることは、物価が高いのではなく
円の価値が低くなったのではないかと思います。
円安が進んで160円前後になっていますが、
100円前後の為替相場の時代と比べても外貨が60%も高くなっているのですから、
この感覚は当然でしょう。

日本は物価が安くて食べ物が美味しい
筆者の友人がヨーロッパにしばらく出張して帰国した直後に会った際に
「帰国して一番ほっとしているのは、
日本は物価が安くて食べ物がうまいこと」と語っていました。
今回も、1泊2日でロンドン郊外のストーンヘンジに観光に行ったときに
11万9000円払いました。
ホテルはビジネスホテル風で2人1部屋です。
室内のアメニティは何もなく、驚きの一語でした。
バスに乗っている時間が異常に長く、これで約12万円です。
ロンドンがいくら物価が高くても、これは異常ではないかと
旅行社の責任者にひとこと言いました。

ついに憧れのストーンヘンジ遺跡に来ました

諸外国は物価が上がっているのに、日本は物価が上がらない。
賃金が上がらないのでは物価が上がらないのは当然ではないかと思ったりしています。

日本はデフレ現象と言われてきましたが、
賃金が上がらないので諸価格を上げようにも出来ない状況が続いて来たように思います。

中南米コスタリカに上陸してびっくり
イギリスの「ニュー・エコノミクス財団」が発表している
「地球幸福度指数(Happy Planet Index)」の2020年の結果によると、
コスタリカは幸福度で世界トップ(日本は57位)になっています。
熱帯雨林地帯に属する国ですが
行ってみたら、報道の自由を確保されたガチガチの民主主義国家です。
中南米では突出した優良国家で、教育費、医療費は基本的に無料。
環境政策にも実績を出し、
高い教育レベル、高い平均寿命など中南米ではトップにあリました。
アメリカ人の好感度ナンバーワンの国で、
最近はアメリカからの移住者が増えていると言うことでした。
人口は515万人(2021年)で、東京都のざっと半分。
カトリック教が国教ですが、憲法で信教の自由を保障しています。
雨期と乾期が交互にくる熱帯地域ですが
最高気温が30℃前後、最低気温が18℃前後で、
雨が不規則に降ってきますが、過ごしやすい国のようです。
筆者が上陸したときにも雨が降ってきましたが、すぐにやんでしまいしました。

しかし産業は、バナナ、コーヒー、パイナップルの輸出と聞いて
技術革新とは無縁の国と思ったらそれが大間違い。
フリー・トレード・ゾーンという税制優遇措置を敷いており、
世界中の大手医療機器メーカーが投資を行うようになり
アイルランドに次ぐ世界的な医療機器の産業集積地域になっていて
日本にも医療機器類を輸出していました。
特に義肢やカテーテルなどの医療器具の開発と生産で実績を出しており
最近は生命科学関連の産業にも注力しているということです。
パナマとニカラグアに挟まれた小さな国ですが、
単純労働力はニカラグアからの出稼ぎでまかない、
自国の労働力はハイテクで稼ぐという訳です。

軍隊を持たず国政選挙も清廉潔白
もっと驚いたことは、軍隊の保有を禁止する憲法を1949年に制定したことです。
日本の憲法第9条の制定は昭和21年(1946)6月ですから
3年後に同じような憲法を制定していたとは驚きでした。
選挙区内の有権者と議員との癒着を防ぐため、
国会議員の同一選挙区での連続再選を禁じているという国です。

バスの車窓から見た熱帯雨林の景色。
終日、雨模様であり深い緑の山地は、日本の森とよく似ていました。
松の枝のように張り出している樹木もありましたが
よく見るとまったく違う樹木であり、熱帯地方の林相は緑の重層でした。

日本の選挙のコスタリカ方式は何の意味?
日本の国政選挙で「コスタリカ方式」と言う言葉があります。
小選挙区比例代表並立制の選挙戦術の一つ。
同じ政党または友党に競合する候補者が存在する選挙区では、
1人を小選挙区に、もう1人を比例区に単独で立候補させ
選挙ごとにこの2人を交代させる方式です。

訪問したら真っ先にそれに関することを聞きたいと思っていました。
何だろうか、コスタリカ方式とは。
ネットで調べて見たら、びっくりすることが書いてありました。
ホンモノのコスタリカ方式は有権者と議員の癒着を防ぐ制度であり、
小選挙区比例代表並立制の選挙などコスタリカにはないのです。
コスタリカの選挙制度は
日本で言っている「コスタリカ方式」とはなんの関係もない
立派な政治目的を持った清廉潔白な制度でした。
小選挙区比例代表並立制導入当時、森喜朗・自民党幹事長が命名したものとありますが、
コスタリカの人々には恥ずかしくて言えない命名に呆れてしまいました。

ショッピングセンター内には世界的に有名なブランド店を始め、多種類の店舗が並んでいました。
日本ブランドもありました。ピッカピカで清潔。
ゴミの分別もきちんとされており、これまで訪問したどの国よりも清潔感がありました。
日本のデパートよりきれいに見えました。

見通しのいいコーヒーショップに座って、しばらくこの国の人々を観察してみると
ここはヨーロッパのどこかの国ではないかと錯覚しました。
大人も子どもも、男女とも実に整った美形のお顔であり、
女性は均整のとれた金髪が多いのです。
ワンちゃんを連れている人が多いことにも気が付きました。

どのワンちゃんも毛並み鮮やか、よく訓練されており、
行き交う人に話しかけられるとちゃんとお行儀良く振る舞います。
生活環境の余裕が、ワンちゃんの振る舞いにも出ていました。
筆者がブログ用の写真を撮りたいのだがと申し出たら快諾して、
すぐにこんな場面をつくって撮影に協力してくれました。
女性のバックの洋装店はたまたま有名ブランド店でした。

ワンちゃんトリミングのお店は、外からよく見えました。
実にお行儀良く毛作りを受けており、
ワンちゃんと息の合ったトリマーの見事な手さばきに見とれました。

子ども連れの人も多くいました。
子どもたちの服装や仕草・行動を見ていれば大人や社会の様子も見えてきますが、
どの子もいい子に見えました。
ふざけあいじゃれ合うのは、どの国の子も共通ですが、
お母さんたちはそれを楽しそうに見ています。
雨降りの中でスクールバスを待っている団体にも出くわしましたが
バスが来ると子どもに続いて大人という順番が決まっているのか、
実に見事な流れであっという間に乗って去って行きました。
世界一幸せな国の一端をいやというほど見せられました。
人々の動作・表情を見ているだけで、幸せ感が伝わることを初めて実感しました。

ただ、港の近くの地域には物乞いがいたし
皮膚の色などから原住民の系統らしい住民でした。
コスタリカには、一か所に定住しないで
森の中を移動して生活する原住民がそれなりに残っており、
貧富の差、失業率の改善などに課題があることも知りました。
駆け足で見聞したコスタリカですが、訪問した国の中でも最もいい印象に持った国でした。

つづく

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