コラム

生き方への影響

2024年になりました。
頂いたカレンダーには、令和6年、平成36年、昭和99年、大正113年という記載があり、
それぞれの時代からの経過年が書かれていました。
私は昭和生まれなので、昭和が来年で100年になるということで
少しばかり感慨深い思いをしました。

思いを寄せたのが、半世紀前の昭和時代です。
会社に入って6から7年経ち仕事もある程度経験を積んだ時期でした。
誰しも一度や二度はこの仕事を続けていて良いのだろうか、
もっと自分に適した仕事があるのではないかと思いを致し、
もう少し他の仕事を体験してみたいと思うことがあるでしょう。

その頃の私は、発明の発掘、明細書の作成や意見書などの権利化に向けた業務が主な仕事でした。
しかし、もう少し自らが考え、いろいろな商品開発を行う業務につきたいと思い、
クリエイティブな仕事を望んでいたのです。
そしてこともあろうにイラストレーションの仕事にあこがれ、
デザイン事務所への転職を目指し、会社に辞表を提出したのです。

ところが、提出した辞表が人事部門に回された際に、人事の課長にちょっと待ちなさいと言われ、
会社の先輩で、当時イラストレータとして活躍していた緒方健二さんの所に
相談に行くようにアドバイスされたのです。
そして辞表は一時預かりとなり、会社に勤める傍ら、
定時終了後や休日に緒方さんの事務所兼自宅に住み込みのような形で身を寄せ、
仕事を手伝い、さらに色々なことを教わりました。
イラストレーションや、レタリングの仕事をするだけでなく、
物事に対する見方考え方が勉強になったのです。
新しいことを生み出すためには他人と同じことを考えるのではなく、
大げさに言えば世の中の人とは違う視点で物事を見るようにと口を酸っぱくして教えられました。

ショックだったのが新聞やテレビの情報を鵜吞みにするなという指摘でした。
世の中の動きを異なる視点で良く見極めろと言われ、
筑紫哲也さんが編集長をしていた週刊誌「朝日ジャーナル」を毎号読むように勧められたのです。
この週刊誌はすでに廃刊になっていますが、
世相を様々な視点で見た記事が多く、大変貴重な見方を養うことができたのです。

緒方さんが言われた中の一つが、漫画をコンピュータで描けないかとの課題です。
半世紀前のコンピュータは、作画はもちろんアニメーションなどとんでもない夢のまた夢でした。

当時の大型コンピュータは、メモリーも演算スピードも現在のパソコンの百万分の一以下で、
給料計算や経理処理をコンピュータで行うことが画期的なことと言われていた時代です。
現在ではディズニ―のアニメーションも大半がコンピュータで生成できる時代になりました。
実はテレビジョンのコンセプトもヨーロッパの漫画に登場したのが初めだったと聞かされ、
当時の常識や技術に捉われないで、夢を描き実現するように発想してゆくことが
大切なことだと諭されました。

私はこの視点変える見方を生かし、
社内啓蒙、知的財産意識の高揚と設計部門が知的資源を最大限活用して
新たな商品やサービスの提供を心がけ、
他社の物まねでないユニークな商品開発を目指すような意識改革を
進める仕事に携わるようになりました。
もちろん知的財産部門が研究開発に口出しをできる訳がないので、
結果として有効な特許などの取得には、
時代を先取りしたユニークな開発がまずは重要であると説いて廻ったのです。
特許権生産計画と名付けたキャンペーンでした。

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