国家知識産権局が『商標登録出願迅速審査弁法(試行)』を公布し、
4つの場合に迅速審査を請求することができる
馮超 森康晃 薛蓮
国の質の高い発展のため、知的財産権分野の「放管服」すなわち簡政放権(行政簡素化と権限委譲)、
放管結合(権限委譲と管理の両立)、優化服務(サービスの向上)改革の政策を実行し
法により国家利益、社会公共利益又は重大な地域発展戦略に関わる商標登録出願を迅速に審査するために
2022年1月14日、国家知識産権局は『商標登録出願迅速審査弁法(試行)』(以下、『弁法』という)を公布し
主に迅速審査を請求できる状況、迅速審査を請求する条件、迅速審査を請求するために提出すべき資料及び
迅速審査終了の状況について詳細に規定しており、ここで主な内容を以下のように解釈します。
① 迅速審査を適用する状況について明確に規定する
『弁法』は、次の4つの場合のいずれかに該当する商標登録出願について、
迅速審査を請求することができると規定しています:
1.国家又は省級の重大工程、重大プロジェクト、重大科学技術インフラ、
重大競技会、重大展示会などの名称に係わり、かつ商標保護に緊急性がある場合;
2.特別に重大な自然災害、特別に重大な事故・災害、特別に重大な公衆衛生事件、
特別に重大な社会安全事件などの突発的な公共事件の期間において
当該突発的な公共事件への対応と直接関連する場合;
3.経済社会の質の高い発展のため、
知的財産権強国建設綱要の実施を推進することが確かに必要である場合;
4.その他、国家利益、社会公共利益又は
重大な地域発展戦略の保護に対して重大な現実的意義がある場合。
② 迅速審査の条件について具体的な要求を提出する
『弁法』の規定によると、出願人全員の同意を得て電子出願方式が採用され
出願される商標が文字のみで構成されており、優先権主張が提出されていないという前提で
迅速審査出願の条件・要求に合致します。
迅速審査を請求する商標登録出願が共有商標である場合には
商標登録出願の迅速審査請求書に記入する際に、すべての商標登録出願人の名称を記載し
かつ出願人全員を通じて署名又は押印しなければなりません。
団体商標、証明商標の登録出願については、『弁法』を適用しません。
また、出願商標の指定商品又は役務項目が上述の4つの状況と無関係である場合
又は指定商品又は役務項目が『類似商品及び役務区分表』以外の非規範的商品
又は役務項目である場合にも『弁法』は適用されず、
一般的な手続に従って審査するしかありません。
③ 迅速審査出願の提出資料を明確にする
商標登録の迅速審査を請求するために提出する必要がある出願資料について
具体的には、商標登録出願の迅速審査請求書、
本『弁法』第二条の規定に合致する関連資料及び中央と国家機関の関連部門、
省級人民政府又はその弁公庁が発行する迅速審査請求に対する推薦意見、
又は省級知的財産権管理部門が発行する迅速審査請求の理由
及び関連資料の真実性に対する審査意見が含まれます。
上述の資料の形式要件について、『弁法』は、
必ず紙書類の形式で国家知識産権局に提出しなければならないことを明確にしています。
④ 迅速審査出願の提出後の手続
提出された迅速審査申請資料が『弁法』の規定に合致する場合、
国家知識産権局は審査決定を下し、20営業日以内に審査を完了します。
『弁法』の規定に合致しない出願については
迅速審査を行わず、法律の規定する一般的な手続に従って審査します。
⑤ 迅速審査手続を終了する場合
迅速審査の過程において、商標登録出願が法により補正、説明又は修正を行うべきであり
かつ同日出願審査手続を行うべきである場合、
商標登録出願人が迅速審査請求を提出した後、審査猶予請求を提出した場合、
又はその他の迅速審査を行うことができない状況が存在する場合には、
迅速審査手続を終了し、法律に規定された一般手続に基づいて審査することができます。
⑥ 中日商標登録出願の迅速審査手続の比較
中国と異なり、日本の商標登録出願には2種類の迅速審査手続があり
それぞれ早期審査とファストトラック審査があります。
【1】日本商標登録出願の早期審査を申請する手続き
日本商標登録出願について
次のいずれかに該当する場合には、早期審査を申請することができます:
1.出願人又は被許諾者が指定使用商品・役務において既に出願商標を使用しているか
又は相当程度に出願商標を使用する準備をしており、
出願人又は被許諾者が商標権を取得する必要に迫られている場合。
以下の状況のいずれかに該当する場合、
「商標権を取得する必要が差し迫っている」とみなすことができます。
(1)第三者が出願商標を無断で使用し、又は使用しようとする場合;
(2)出願商標の使用又は使用の準備について第三者から警告を受けた場合;
(3)第三者が出願商標の使用許諾を取得したい場合;
(4)出願人が日本以外の国に対して商標出願をしている場合;
(5)出願人が出願商標に基づいてマドリッド商標の国際登録出願を出願しようとする場合。
2.指定商品・役務は、申請者又は被許諾者が既に使用している
又は使用する予定のある商品・役務である場合。
指定商品・役務の中の一部の商品・役務の使用証拠を提供できず
既に使用されている又は使用する準備ができていることを証明できない場合には
関連商品・役務を削除する必要があります。
3.出願人又は被許諾者が既に一部の指定商品・役務において出願商標を使用
又は使用する準備をしており
かつ指定商品役務が『類似商品役務審査基準』等に列挙された規範的商品・役務名称である場合。
【2】日本商標登録出願のファストトラック審査手続
商標登録出願が以下の2つの条件を同時に満たす場合には
商標登録出願を提出した後、自動的にファストトラック審査手続に移行することができ
出願人は別途出願する必要がありません。
1.出願商標の指定商品又は役務は、規範的商品又は役務(『類似商品役務審査基準』、『商標法施行規則』
又は『商品及び役務国際分類表』(ニース分類)の要件を満たすもの)でなければならないこと。
2.出願提出後から審査前までに指定商品・役務に対していかなる変更も行わなかったこと。
注意すべきは、日本の商標登録出願の審査期間の短縮により、日本特許庁は公告を出し
2023年4月1日にファストトラック審査手続を一時停止すると宣言しているが、
2023年3月31日以前の商標登録出願について、ファストトラック審査の要件を満たすものは
依然として自動的にファストトラック審査手続に移行することになります。
ただし新規商標(動態商標、立体商標、色彩組合せ商標、音声商標及び位置商標、一部立体商標等)
及び日本に領域を拡大するマドリッド出願については、
早期審査及びファストトラック審査手続のいずれも適用できず
一般的な手続に基づいて審査するしかないです。
【3】中日商標登録出願の迅速審査手続の分析
商標は、同時に私権の属性と公共性、社会性を兼ね備えており
商品又は役務の出所を示す商業標識である一方で
国家利益、社会公共利益とも密接に関連しています。
中日商標登録出願の迅速審査制度は
中国:国の利益、社会公共の利益又は重大な地域発展戦略の維持を目的とする『弁法』の発表
日本:出願人の商標権取得の切実な必要性を解決するために制定した早期審査手続
とまとめられます。
どちらも商標審査制度を様々な程度に整備し、市場主体の異なるニーズをよりよく満たすと同時に、
商標出願の審査時間を更に短縮し、商標審査の効率を高めました。