知的財産制度崩壊
最近のAIをめぐる動きは、フト知的財産制度の崩壊を招くのではないかと感じます。
知的財産に関係する仕事に長い間携わってきた私ですが、なにやら不健全とも言える感情が頭をもたげてきました。
知的財産制度が産業の発展に寄与することは疑いのない事実で、そのために法律制度も確立され、的確に運用もされてきたにも係わらず、制度崩壊を窺う気持ちが出たのです。
最近のAI技術は私の想像をはるかに超えるスピードで進歩してきております。
もちろん、まだ未だ人智を超えるところまでAIが汎用的に対応できる能力があるかどうかは、いささか疑問もあります。
しかしながら、人が経験して学ぶ情報量よりも多くの情報をそれなりに整理して、課題に対して解決する対処方法や対策を提案してくるAIサービスが少なくありません。
最近のリモートワークで、従来のように先輩の知恵を習得する機会が少なくなっている状況を補完するような情報が得られるようになってきているかも知れません。
情報を判断評価する力は、つまり見る目を研ぎ澄ます能力は人でなくてはならないと、私は思っているのです。
判断するために必要な広範囲な情報を探してくる能力は分野にもよりますが、AIがある程度やれるようになってしまいつつあるのかなと思ってしまいます。(未だ確信ではありませんけれど)
AIの発展は言語処理技術の進化と、高速度で大量の情報を処理できる技術の発達や、環境整備に多大な投資がなされ、正に日進月歩の進化進展があります。
大量の過去の蓄積情報を瞬時に処理する能力は素晴らしいことです。
以前からシステム開発や情報処理の世界では、研究者やベンチャービジネスなどを中心に、すべての権利を共有にして、個人や企業が占有すべきではないという風潮がありました。
しかし、そうしたビジネス分野でも知的財産権を確保していかないと、初めに気づいたり発明した誰かが権利を取得してしまえば、権利者の断りなしにビジネスが推進できなくなる可能性があります。
そのためには自ら開発した技術は権利化しなくてはならないと常日ごろから関係者には言ってきていました。
そして、必ず先行している技術を調べ、権利がないかどうかの確認をして、クリアにして開発を進めなくてはリスクがあり、経済的ではないと言ってきていました。
ところが、最近のAIをめぐるサービスは、他人の著作物をどんどんディジタル情報化して、利用者の求めている情報に編集加工または整理して結果を提示してきます。
AIの提示した情報は、どこまでがオリジナルの著作物か、編集加工したものか判断できず、権利関係があいまい、もしくは線引きできない状況が現れてきています。
少なくとも利用者にはAIのオリジナル性は分からないと思うのです。
AIをツールとして使ったサービスや発明が、現実世界に数多く出てきています。
実際にAIシステムが発明者だとする案件も特許出願されています。
AIでディジタル情報化されたオリジナル文献などの著作者が権利を主張したり、読み込ませることを禁止する訴訟や指摘も多く出てきています。
そもそも訴えられる可能性があっても、先ずはビジネスを構築してしまい、成功したらそれなりの対価を払えば良いとする気風が、まかり通っているのです。
これは知的財産権制度の不要論を招きかねない、世の中の動きのように思えてなりません。