コラム

ニオイ提示

人はニオイ(匂い、臭い)を感じますが、ニオイに敏感な人とそうでない人がいます。

臭いという表現はあまり良い印象ではありませんが、悪臭の代表ともいえる「ごみや、工場排水などの廃棄物資の臭気」があります。
これに対して香りといえば「花の香り」など、香水は好まれる人が多いのではないでしょうか。
ニオイを出す物質は、約40万種類以上あると言われており、混じり合う組合せによって、ニオイの濃度や、ニオイの質がさまざまに変化します。良い香りでも濃度が濃くなると悪臭に感じる人も出てきます。

日本では1996年の悪臭防止法の改正で、工場などから出されるニオイで、周辺住民が困らないように、臭気指数による的確な判定法が導入されました。

機械ではなく、ヒトの鼻で感じるニオイの濃さを表した“臭気指数”という尺度が開発されました。
しかし、臭気指数は6人の鼻を使うため、精度よくかつ安全に測るには知識と技量が必要となります。
そこで、国家資格の『臭気判定士』が誕生しました。
臭気判定士は6名で、臭気環境分野で悪臭かどうかを判定するのです。

ニオイは人の五感の中では微妙であり、ニオイの感性はバラツキがある中で、臭気指数があるということは今まで知りませんでした。
ニオイの制御は難しく、同じニオイでも嗅ぎ続けていると段々感じなくなり、嗅覚の刺激や制御は困難な課題ではないかと常々思っていました。
寝室や居間を心地よい香りで満たすことは生活を豊かにするためには欠かせないとして、アロマディフューザーを使う人も増えているそうです。

また、映画やテレビなどを見ていて、おいしそうな料理や美しい花などのシーンで、どのような香りがするのだろうと思って、見ていたことがあります。
そんな香りの演出という夢のようなことが現実になりそうな技術開発が行われています。

ニオイ提示装置です。
色々なニオイの元を、カートリッジに詰めて、吐出量を制御するのです。
ニオイ発生カートリッジと、補助風を発生する送風源を持っていて、ニオイを含む空気の吐出条件を制御する吐出制御部を備えるニオイ含有空気の吐出制御機構が出願されています。

2025年1月28日に公開になった、特開2025―13740号「匂い含有空気の吐出制御機構及び匂い含有空気の吐出制御システム」(ソニーグループ)です。
私の印象ですが、インクジェットプリンターのヘッドのように、個別のニオイを充填したカートリッジを複数持つことで、多色ならぬ複数のニオイを効率よく吐出できるのです。

ニオイを制御する技術は、用途が広く、臨床・耳鼻咽喉科や神経内科における嗅覚機能評価・研究。
認知症(アルツハイマー病など)やパーキンソン病の早期嗅覚低下検出・モニタリング。
食品サンプルの官能検査、臭気測定による品質管理・不良品検出。
香料メーカーでの香り評価・調香プロセスの支援。
店頭体験型サンプル提示による購買促進。
映像コンテンツやゲーム、VR/AR体験における没入感向上のための香りの演出。
自宅やオフィスで楽しむパーソナルアロマディフューザーなどへの応用です。

従来、制御が困難であったニオイの分野での技術開発には、楽しみのニオイが感じられます。

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