コラム

DXとは何ぞや
21世紀構想研究会講演から理解したDXのリアル

DXバブルになっていないか
世の中、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉があふれている。たとえば、タクシーに乗ると後部座席に向かって展開しているPR画面には、やたらとDX文字が氾濫しているように思う。
そこで、このほど筆者が主宰する認定NPO法人・21世紀構想研究会で、DX企業としてトップを走っている株式会社コア・コンセプト・テクノロジー(CCT)取締役CTO・マーケティング本部長の田口紀成氏に「DX企業から見たDXのリアル」のタイトルで講演をしてもらった。

筆者は、2000年ごろから始まった「知財バブル」をつぶさに見てきたが、今回のDXブームもそれと似ているように感じている。言葉だけが上滑りして、20年経ったら大した成果も実績も残らなかった、となりはしないかと危惧し始めている。
人の話を聞いていても、一つのシステムを完成してそれを運用し、何がしかの効率化を果たすとDXの成果と誇っているように思える。DXとは業務の効率化はもちろんだが、システムを作って実現して終わりではないと常々感じていた。

UIとUXから始まった講演
田口氏が提示したのは、まずDXに関する基礎知識だった。人とデジタルをつなぐ窓口をUser Interface(UI)と呼び、講演で使っているZOOMを見ている画面そのものもUIを指しているという。
これに対しUXとは、User Experienceであり、人とデジタルがつながることで得られる体験を指しているという。
筆者の理解で言えば、UIはPCやネットなどのツールを使って利便性に接することであり、UXは、UIで得られた体験がユーザーにとって、とても便利で使い勝手がよくて時には感動することを指しているようだ。

田口氏は「UIは人とデジタルをつなぐ窓口、画面そのものを指しています。直感的に使えるということを意味します。UXのほうはもっと深い、目的によりフォーカスしたサービスのあり方のことを指しています」という。
モノが主役の時代からサービスが主役の時代へ急速に変化してきた。企業でも機関・組織でもモノの時代は、効率化と労働力の管理統制や規律のルール化で労働力を事業価値に転換する時代だった。
サービスの時代になると個人の才能と新規的価値の創出、多彩な労働力の育成と機会の提供、そしてビジョンとミッションの共有・自律による運用というように重曹で立体的な価値創出の時代になったことを田口氏は指摘した。

たとえば世の中を変えている5つの企業
DXが必要になってきた世の中の基盤を解析し、DXの概念を語ったあといま何が起こっているのか。田口氏が提示したものは既成の業界を打ち破って出てきた新しい企業群の事例だった。

① UBER ②Airbnb(エアービーアンドビー) ③Netflix ④Spotify ⑤PayPal
である。
 筆者が聞いている言葉は、①、③、⑤であるが、②と④は、知らなかった。さらにこうしたシステムを体験したのは、①のUBERだけである。③と⑤は人が利用している状況は見ているが、自分で利用しようという気にならない。それだけで年代が分かってしまう。

UBERはタクシー・レンタカー業界の破壊者とされている。筆者もタクシー代わりによく利用していたが、コロナ感染拡大になって休業状態になっている。いずれ復活するだろう。

5つの業務内容についてここでは詳しく触れないが、参考までネット解説を掲出したい。いずれも既成の業容を越えたコンピュータ活用の業態運用であり、異質の競争力を持っている

UBER とは:https://koneta.nifty.com/koneta_detail/1141008005308_1.htm
airbnbとは:https://airstair.jp/airbnb_hotel/
Netflixとは:https://help.netflix.com/ja/node/412
Spotifyとは:https://support.spotify.com/jp/article/what-is-spotify/
PayPalとは:https://wise.com/jp/blog/what-is-paypal

DXとは組織を現実の競争に勝つように強化し、圧倒的なビジネス速度を持つ企業や組織の活動を指すものだろう。システム一つを指すものではない。
しかし田口氏は、いまDXに向かって加速度的に変革が起きていることに人材供給が追い付かないと指摘している。逆の言い方をすると、IT人材調達力がなければ競争力を得られないため業界から遅れていくということになる。

知財バブル時代をつぶさに見てきた筆者の体験からこれを観察すると、企業にとってDXが重要であることを誰が認識して社内の戦略を整備し実現するのか。知財の場合は、企業のトップが知財の本質と知財戦略の中身を理解して経営戦略に取り込んでこなければ、全く意味がなかった。
DXを経営の重点課題として取り入れるためには、トップがDXの本質を正確に理解し、自社の経営戦略の中にどう入れていくのか明確に認識しなければ実効性はないだろう。

中国の知財国家戦略がうまく回っていった最大の要因は、継続性にあったとみている。数年先の直近目標だけではなく、5年、10年先を見通した施策を立て、国務院主導で継続的に進めてきた結果が蓄積され、国家戦略の成果になっていることは間違いない。

日本の場合は、一般的に政権が変わると大きく施策が変わることが多く、社会の耳目をひく「目玉施策」という考え方が、実効性のある行政の足を引っ張ってきた。
DXとは、単に業務の効率化やコスト削減を果たすだけではない。企業にあってはビジネス拡大へとつながらなければ全く意味がない。顧客や製品のサービス、安心・安全の確保、社会的課題の解決など付加価値を持たなければ、DXとしての意味はない。

今回は、DXの概念的な価値の一端を語ったに過ぎないが、具体的な事例を集め今後このテーマを発展させたいと思う。

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