コラム

個別化医療

先日ある薬品メーカの知的財産部長から聞いた話です。薬は人により、効き目が違うし、人により副作用の出方もまちまち。お医者さんが処方してくれる 薬も数多くあるため、お医者さんは症状に応じて先ずは軽い薬から処方し、効き目を見て強くしたり弱くしたり、副作用があれば変えるそうです。色々と患者と 薬の関係を観察しながら試行錯誤しているのが今のお医者さんであるとのことでした。

確かに私の高脂血症の薬では、ある程度の数値を見て薬を飲まされ、半年ごとに血液検査をしてその後の数値の変化を見ている。薬を変えるとひと月で血液検査 を行うので、検査料で稼いでいるのかなとも思っていたが、薬の薬効や副作用を調べているので、やむを得ないことらしいのです。

ところが、こうした病気の兆候を見ながら治癒を行うのでなく、ヒトゲノムを分析して、その人が本来持っている遺伝子から、未然に治療を行うことや、発病し てなくとも手術をしてしまうケースが始まっているとのことでした。そして、ある種の遺伝子を持った人に合った治療を行うことに、薬品メーカや検査機関が新 しいビジネスを模索し、実施し始めているとのことでした。

2013年5月にアメリカの女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝子の変異 を調べる検査を行い、乳がんのリスクを抱えていることが判明したため、乳房を切除する手術を行ったと発表され、少なからず多くの方が驚くとともに、そこま で確証のある検査が既に行われているという事に改めて医療の革新を意識したものです。

こうした医療を、個別化医療(Personalized medicine)とか、オーダーメイド医療というそうです。

薬品メーカも、これからは飛躍的な市場を持つような新薬開発は望めなく、個別化医療用の検査薬や、オーダーメイドで、その人に合った治療ができ、副作用がない薬を作って提供する方向に確実に進んでいるということでした。

ところが、先の遺伝子検査には特許があり、米国特許第5747282号「17Q-連鎖乳がんおよび卵巣がん感受性遺伝子」ミリアド社の独壇場だったそうです。

ところが、米国の市民団体が、この特許にある遺伝子は、自然界にあるものを単離した遺伝子であり無効であると主張し、米国の最高裁判所が権利は無効であるとの判断を示したのです。

今までも色々な病理に関連する遺伝子配列を特定し、その遺伝子を権利化した特許は数多く(約3000件8000クレームとも言われる)あり、今後の審査にも、権利の無効判断にも大きな影響を持つものです。

米国では審査基準を修正する動きもあるそうですが、自然現象とか自然法則に過ぎないと看做されたものは、一切認められないとなれば、個別化医療の推進を阻 害するとの意見もあります。的確な病理判断と、病気に弱い身体の特定の遺伝子に作用をするオーダーメイドの医薬の開発を阻害するとの考えもあり、未だ議論 は止みません。

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