コラム

CADを止めろ

昔の製品設計や開発部隊では、製図板と鉛筆または墨がつき物でした。きれいな設計図面が書けない人は、設計者としては失格だとして美しい設計図を書くトレーニングが必須だったのです。

ところが現在の研究開発、製品の設計に欠かすことができないものはコンピュータによって設計を支援してもらうシステム、つまりCADになっています。いう までもないことですが、CADは、ほとんどの業種で使用されており、設計者は何やら端末機とにらめっこでないと仕事が進まなくなっているのが最近の設計部 隊の状況です。

ひとたび、CAD用のコンピュータが停止しようものなら、大袈裟にいえばパニックを引き起こします。コンピュータは設計に限らず、今や生活の一部ともいえますから、コンピュータが止まることは社会生活の上でもニュースになるくらいです。

このCADを「止めろ」と命令されたら、皆さんどうします。少なくとも設計の仕事は進められませんね。納期に間に合わなくとも知らないよ。と言い出す人も一人や二人ではないでしょう。

このCAD用のコンピュータを全社的に月に一度は止めている会社があります。一日中動かさないのです。一般的に、保守作業や何かのためにちょこっと止めることは無くはないでしょうが、勿論そうではありません。ある目的のために必ず止めるのです。

このCADを止める日は、一切の打ち合わせや商談も禁止です。研究開発を進める上で協力会社や社外の様々な人々の支援を受けたり、共同で開発したりする事はありますが、そうした人々との打ち合わせも「まかりならぬ」というのです。

要するに、設計やその他の仕事を一切断ち切るのです。相当の意気込みですね。

そして、その日は何をやるのかというと、皆で特許公報を読むのです。あらゆる設計部隊が一斉に設計の仕事を止めて、手分けして特許公報を読むそうです。あ る部門はどの技術というので、区分けして分担するそうです。特許公報を読む目的は技術のトレンドを知ったり、侵害する特許のピックアップです。必ずレポー トが出され、技術の動向や他社の動きを他人に分かるように記載することが義務付けられています。

レポートの良し悪しは他人が評価します。大変厳しいそうです。手を抜いたブロックは村八分になってしまうといいますし、マネージャに対する査定が低下する ことは間違いないといわれています。つまり、「他人のために特許を見る」これが、CADを止める日の仕事なのです。この「特許デー」に訪問する人を阻止す るのも、他メーカとの打ち合わせがあって・・・などといういい訳を排除するためだそうです。

こうした事を徹底している会社は、どこか違いますね。新しい技術を学びたいがためにお互いに協力して、コンピュータを止め、勉強をし、知識を分かちあう。素晴らしい会社だと思いました。著名な一部上場企業の話です。

こういういい方は誤解があるかも知れませんが、大規模な会社で良くもそこまでできるなと感激しました。

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