馬油
私が馬油にお目に掛かったのがいつごろだったかは、大分昔のことで、はっきり覚えていません。九州を旅していた時だったか、どこかのホテルに馬油石鹸か、馬油のシャンプーが置かれていて、変わった名前のものだなと思った記憶があります。
娘の肌荒れのために何か良いものは無いかと探していた時の事かも知れません。最近は症状も少なく、話題にもならないのは、この馬油の力だったのかも知れません。
馬油というものが気になって色々と調べて見ますと、中国では5から6世紀頃から馬油が使われていたそうです。髪の毛が生えるとか、手足のあかぎれ、ひびを直すとか、シミやソバカスに効果があるとの文献が残っているのだそうです。
馬油というのは、馬の脂肪から採った馬脂だそうで、九州の福岡県に住む直江昶さんが名づけたのです。
直江さんは、古代の古いお寺さんに伝わる馬の脂と、梅の核の中にある有効成分の二つのテーマの研究を第二次世界大戦が終った頃からされたといいますから、70年近く前になるのでしょう。古代の中国の文献にも載っているという馬の脂の効能が、それまではほとんど知られていなかったのだそうです。
この直江さんが名づけた馬油は、商標登録がなされています。登録商標第2712496号「ばぁゆ馬油」で、馬から採った脂、馬脂を指定商品にしています。
また、1988年には「皮膚の化膿を防止する外用薬」で特許を取得しています。発明者は直江昶さんで、ソンバーユ株式会社が権利者です。この特許は、馬脂を加熱溶解して固形の混じり物を除去して、さらに湯洗または蒸溜して不ケン化物を除去することで、酸価0.9以下、ケン化価195から201、ヨウ素70から72、比重を0.916から0.917にした油脂を有効成分とする皮膚の化膿を防止する外用剤です。火傷や外傷の修復に効果があるとされています。不飽和脂肪酸特有の浸透率で体温で液化するため、皮膚の自己快癒力を促し、皮膚組織の活性化で、やけどのケロイドもなく元の皮膚と同じ様になるといいます。
最近は絆創膏にハイドロコロイドといわれる皮膚を蘇生させる組成物が貼られたタイプの商品が登場していますが、馬油の効果も同じようなことなのでしょうか?
獣脂に皮膚や粘膜などの上皮系細胞の増殖促進効果、患部の再生修復期間を短縮させる効果があるとして、獣脂に対して不溶性もしくは難溶性の親水性溶媒を用いて抽出した「上皮系細胞増殖促進剤」が、特許第2045184号(特公平7-68132号)として登録になっています。獣脂の中には、馬油を用いた発明も請求項に示されていました。倉敷紡績株式会社と肌美和株式会社の共同出願です。
当初の直江さんの作られた馬油も、同じような効果があると思われます。直江昶さんは、昔からある「ガマの油」の有効成分は馬油と同じだったと指摘されています。
ガマの油は古くから武士の必需品として貴重な存在だったことは知られており、流通量から見ても、四六のガマではなく馬油だったのではないかと示唆しておられます。