コラム

青色発光ダイオード

2014年のノーベル物理学賞が発表になりました。赤崎勇名城大学教授、天野浩名古屋大学教授、中村修二カリフォルニア大学教授の3氏に与えられることになりました。

新聞やテレビで多くの話題が発表以来数日は特集が組まれ様々なことが明らかになっています。

今回のノーベル賞受賞は複数の日本人が受賞することに感嘆しました。加えて、物理の世界では素粒子・天体・物性の分野で、ユニークな現象の追求や発見で授賞することが多かったのですが、身近な商品で実用化されている技術が選ばれたことの驚きです。

青色発光ダイオード(青色LED)がエジソンの白熱電球以来の省エネルギーの照明を実現し、信号機、室内外照明、自動車ライト、液晶ディスプレーの背面照明、ブルーレイディスクの読み取り装置など多様な実用製品が世の中に普及していることを捉え、受賞理由の一つに挙げていることに少し驚きました。

こうした工業的な実用化、産業での応用が既になされている技術にノーベル賞が与えられることはちょっと珍しいと感じました。我々のような知的財産、昔は工業所有権といわれ、どちらかというと産業の発展が狙いの発明技術にノーベル賞が授賞されることは会社で日々研究開発をしている人にとっても朗報ではないかと思ったものです。

江崎玲於奈さんと赤崎勇さんのお二人は、私が以前勤めていた会社に合併した神戸工業の大先輩であるのです。神戸工業は結構ユニークな人が多く、世の中で他社が行わないような分野の研究や開発を数多く行っておりました。今回受賞する赤崎勇さんが「青い光に魅せられて~青色LED開発物語」(日経新聞出版)の中でも言及されていましたが、後に富士通研究所長になられた三杉隆彦さんも同じころ勤めていたそうです。

三杉隆彦さんは、特許関係の書き物を見て、私の机に来て感想を述べられてから少し親しくさせて頂きました。その三杉さんがある時に私に疑問を投げかけてきました。ちょうど青色発光ダイオードが中村修二さんの基本特許だと世の中で話題になった時期でした。赤崎勇さんの発明が基本だと思うのだけれど君はどう思うかというのです。

私もダイオードなどのデバイス技術については専門外ですがとことわりながら、赤崎さんらが窒化ガリウム結晶を用いて高輝度の青色発光素子を作ったのが最初の基本的な発明だと思います。そして中村さんの発明は工業的に量産できる基本的な技術を確立したのです。様々な技術開発の積み重ねの中にブレークスルーする発明があり、それは見方によっては、夫々基本発明と呼ばれることはあると説明し納得して頂きました。

サファイア基盤に窒化アルミニウムのバッファを置き、窒化ガリウム結晶を作製する赤崎勇、天野浩さん他の発明、特許第2767392号「窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の作製方法」(1989年出願)などが基本的概念の特許です。

量産に適したツーフローと呼ばれる中村修二さんの発明は、特許第2628404号「半導体結晶膜の成長方法」(1990年出願)です。これらの技術が青色発光ダイオードの実現に寄与したということで今回のノーベル賞の対象になったのです。

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