電子写真
オフィスでコピーや、パソコンで作った文書やプレゼンの資料を出力するときに使われている印刷機の大半は
PPC(Plain Pepper Copyer)と呼ばれる普通紙複写機ではないでしょうか。
基本的な技術は1950年にアメリカのゼロックス社が開発し実用化した技術で、感光体のドラムに静電気で
付着したトナー(黒や着色した粉)で描かれた文字や絵を紙に転写することで、普通紙に可視画像を定着させて記録する方法です。
画期的なこの技術は、今まであった青焼きと言われるジアゾコピー機、つまり湿式のコピー機械から一気に普通紙へのコピーとして普及しました。ジアゾ式で再現しにくい中間的な濃淡(ハーフトーン)の再現性も良く、ジアゾで再現できない場合に使われていた写真を撮るしかなかった複写ができるようになったのです。まさに写真で撮ったような鮮明な画像がコピーできるため、電子的な転写技術という意味で、電子写真法と呼ばれました。ゼロックス社はこの方法をゼログラフィと名付けました。
このゼログラフィ技術はゼロックス社の600件を超える発明が権利化されており、世界の事務機器メーカが普通紙複写機への新規参入の高い障壁となり、長い間独占が続いていました。そうした折にキヤノン社が、新しいPPC技術でゼロックスの特許に触れない技術を開発しました。ゼロックス社は転写ドラムにセレンの感光体を使った技術でしたが、硫化カドミウムを使う高感度のドラムを使いゼロックス社の2層技術に対して3層のドラムを使う技術を開発したのです。キヤノンも数多くの特許を取得して、新たな電子写真方式のPPCを完成したのです。
その中で、様々な特許になる技術を開発していますが、ドラムの寿命と使うトナーの量を最適にして、ドラムとトナーを一体化して交換できる技術を開発しました。またトナーの粒子の大きさを細かい粉と少し荒い粒子を混合にすることで固まりにくくするなど、きめの細かい発明も生まれています。
そんな中で、感光ドラムに着けて普通紙に転写した後のドラムから残ったトナーを削り取るブレードの配置の特許もいくつか出されています。中でもドラムの回転方向にブレードを付け、感光体に付着したトナー(マイナス)と逆の電荷(プラス)を加える発明が1969年に特許化されました。特公昭44-2034号「帯電露光同時電子写真方式における清掃装置」です。しかしカラーや高精細化、さらにはハイスピードに伴い、さらなる発明がなされました。これはドラムの回転方向と逆に曲げた方向に取り付けてドラムについたトナーをそぎ落とす技術です。1979年に特許化された特公昭54-34340号「電子写真クリーニング装置」です。清掃ブレードを定期的に取り外して清掃する必要のないクリーニングができるようになり、飛躍的な美しい電子写真を継続的にできる様になったということです。多くの基本技術の積み重ねの陰で性能を飛躍的に向上させた逆転の発想ともいえる発明かも知れません。