陶磁器
縄文・弥生の時代から人間の生活用品として広く使われている道具の中に陶器や磁器があります。
粘土質の土の上で焚火をしたら、焦げた硬い塊ができたことを発見して、粘土を固めて器を形成し、
焚火であぶることで土器を作り始めたのが最初だそうで、大変に古い歴史があります。
私は知的財産の入門編では、こうした土器や矢尻、弓矢などの道具を工夫することで生活を豊かにして、
文明の発展を促したと言った話をすることにしています。道具などの工夫を重ね技術の発展が促される。
これは人間生活と表裏一体だと話し、これこそが発明で、特許などの知的財産権に結びつくとお話しています。
土器が生活必需品として生活の中で浸透してくると、土器の周りに様々な模様を施したり、
美しい造形的な工夫をすることが、デザインつまり意匠権につながるといった説明をしています。
知的財産は身近なものに、多くの工夫がなされて様々なアイデアが生み出され、
さらには工業的な大量生産の段階になり、産業財産権として工夫への保護がなされるわけです。
このような何万年も前に生まれた土器に始まり、長年にわたり使い続けられた陶器や磁器に新しい発明は
もうないかなと思えたのですが、さにあらず、未だまだ新しいアイデアが登場しています。
今回ご紹介する一連の発明は、江戸時代の、ねずみ小僧次郎吉が亡くなった年の天保3年(1832年)に
築窯された歴史のある伊賀焼窯元のお話です。天保当時から使われて昭和の40年代まで使用されていた
登り窯が、2011年に国の登録有形文化財に指定された由緒ある窯元「長谷園」さんです。
住居などの建物も2001年まで実際に住んで使われていたそうですが、2014年に母屋を含めて
12件が登録有形文化財に指定されたのだそうです。
これほどの由緒ある建築物を長年にわたり保存管理することは、技や伝統を大切にする陶芸の世界に
通じるように思われます。むしろ伝統の維持は、ともすると保守的になることは予想できます。
しかしながら、この伊賀焼の窯元さんは、特に最近になり次々と新しい概念の商品を立て続けに
出しているのです。テーブルの上で蒸し料理ができる土鍋が大ヒットしているそうです。
土鍋の中に蒸す蒸気を通す複数の穴を空けた陶器製の、し切り板があり、その上に素材をのせて
蒸すのですが、穴が上の方に向かって円錐状に小さくなっていて、強い蒸気で蒸し上げるアイデアが
特許第3125871号「蒸し料理が出来る土鍋」になっています。
さらに陶器製の圧力鍋があります。鍋の淵に工夫があり、凹ました淵溝に鍋蓋が入り、
水でシールすることで密封される構造です。特許第5659345号「陶器製減圧調理鍋」です。
他にも電子レンジ対応の炊飯鍋など数多くの発明が生まれています。