コラム

開発より創造

日本の家庭電気メーカがあまり元気がなく、事業の再構築や身売りなどと色々と話題になっております。
欧米のメーカに比べて新製品開発の企画力が劣るとか、量産技術でも台湾や韓国メーカにはかなわない
との指摘もあります。
そうした中、最近テレビを見ていたら、日本でも元気でユニークな商品を開発しているベンチャー企業が
取り上げられていました。

テレビで初めに紹介されていた商品が、トースターでした。会社の仲間とバーベキューに行っていた折に、
炭火で焼いたパンが美味しかったので、これを実現するトースターを作ることにしたそうです。
ところが炭火のような火力を実現しても、どうしても美味しく焼き上げることが出来なかったといいます。
一緒に行った人から、あの時は強い雨が急に雨が降り出したとのことで、土砂降りの雨(水分)が関係して
いるのではと思い立ち、スチームの中でパンを焼くアイデアに到ったのです。パンの水分を保ったままで、
こんがりと焼くことで、モチモチのパンが焼けたのです。

このトースターを開発したバルミューダという会社は、創立10年程度ですが、社長の寺尾玄さんは、
うれしい体験を形にしたモノを作りたい。使ったお客さんが驚き、製品に触れた瞬間の笑顔を共有したい
との思いで、新しい家庭電気製品を創造し、開発してきました。
モノ作りでの基本であるアイデアの保護もしっかりしており、トースターに水分供給後の腐食を防ぐための
アイデアが公開されています。(特開2016-171861号「加熱調理装置」)。

この寺尾社長さんは会社設立前には、家庭電気製品の開発には一度も携わったことはなく、自分で
欲しいもの、使った人のうれしい顔を求めて商品開発を進めています。
はじめのヒット商品の開発の切っ掛けは、ある工場で大型の扇風機を壁に向けて風を送っている現場を
見たそうです。なぜ壁に向けて送風しているのかと質問したら、扇風機の羽根の回転で起こされる渦巻き流が
壁で折り返し、自然の風のような広い面積から風が送られるので、やさしい風になると聞かされたのです。

そこで自然の風のような広い面積から吹く風を実現するための扇風機を作ろうと思い立ったのです。
一台の扇風機で広い面積からの風を起こすためのファンを実現しようと思考錯誤を重ねました。
流体力学を学び実現したそうで、今まである扇風機の渦流でなく二重構造の羽をゆっくり回すことで、
広範囲に拡大する、やさしい風を起こす扇風機を作ったのです。
羽の構造の特許第4949537号「軸流ファン」、首振りの構造を工夫した特許第6087509号
「扇風機」など数多くの特許を取得しています。

大手のメーカが追従してくるような商品を創造することは、市場からも認められる商品を開発できた喜びを
感じるとまで言われていました。人の物まねはしないと断言し、しっかりと権利化を図っている姿は、
ベンチャー企業が生き残るためには必須であることを意識していると思います。

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