進化のクイックルワイパー
大学や企業の初心者向けの教育で身近な商品を取り上げて、こんなところが知的財産として取得されているんだよと紹介する話の種にクイックルワイパーを使っています。
ある企業向けに新しいクイックルワイパーを用意してもらったら、今までと全くと言って良いほど製品が進化していました。私が知っている限りでは初代の商品から三代目となりますが、この三代目の革新的変身に脱帽しました。
化学雑巾を長い取っ手で保持するヘッドに取り付け、立ったままで床や畳の細かいゴミをふき取り付着させるお馴染みの商品です。
二代目でも充分に様々な工夫がなされ、少なくとも初代に比べるとゴミの補足は完ぺきと思っていたのです。
最近の新製品は先ずはヘッド部分の進化が著しく、真ん中から波紋を描くがごとく、断面を見ると凹凸が繰り返される形になっており、長方形の四隅からも波紋が始まるような構造になっていました。特開2011-183153号「清掃具」として公開になっています。また、特許第3625045号「清掃具」では、従来からみられた湾曲させたシートの取り付けヘッド部分の内部に弾性スペーサを設け、湾曲部分が取っ手の力の入れ具合と床の形状に合わせて、必要に応じて押し潰され平面になるような構造を保つ発明が採用されました。
従来は多数の凸凹模様を付け、さらに凸部の頂点にくぼみを設け、床やじゅうたんとの接触部分を増加させ、ゴミを捉え易い構造になっていましたが、まったく 大変身。従来の商品に比べ、確実にゴミの補足状況が向上していました。従来の工夫に満足せず、飽くなき改良を重ねていることに驚き、これが他社を寄せ付け ない研究開発の成果だと感心した次第です。
最近の製造メーカはなんか元気がなく、特許出願の数も減少気味で、コスト面や工夫面でも、韓国、中国、台湾のメーカに頭一つ抜かれたという論説が目立ちま す。あきらめてはいけない、工夫や製品改良を飽くなきまでも推進すれば、良い製品も生まれるし、良い発明が出てくる典型的な例として着目したいものです。
クイックルワイパーの変身はヘッドに留まりません。ヘッドと継ぎ手を繋ぐ、ユニバーサルジョイントも大変シンプルな構造に変わっています。継ぎ手とヘッド の繋ぎ部分に二股状の腕を持たせ、相互に連結させる回転部材で繋ぐ構成です。この回転部材と腕部分のテーパ構造で回転し過ぎず、ある程度雑巾の状況を保持 する形になっています。これは特許第5031449号「清掃具の継ぎ手機構」として権利化されています。
また、クイックルワイパーがコンパクトに収納できて、掃除する対象によって、取っ手の長さを変えることができる短いパイプを数本連結する構造ですが、特許第3649688号「パイプの連結構造」として特許が取られています。これも従来は連結構造を部分意匠にしていましたが、特許として権利化されています。