コラム

進化する中国の知財紛争の手口

一昔前は単純な物まねだったが・・・

特許、実用新案、意匠、商標などをめぐる中国での知財紛争が年々増加している。最近は中国企業や中国人同士の紛争も増えているが、日本企業が巻き込まれているケースも依然として減っていない。

中国での知財紛争と言えば、10年前までは商標、ブランドマークのデッドコピーや、SQNYとかHITACCHIとかTAYOTAなどの「なりすまし商標」が多かったが、中国当局の取り締まりが厳しくなるとともに姿を消し、新たな手口へと進化してきた。

日本で製造を始めた製品の商標を知らないうちにさっさと中国で商標登録してしまう「先取り商標」などもあり、いざ中国で製造、販売する段になって初めて状況に気が付き、権利者に交渉すると法外な値段で買い取りを要求するケースも後を絶たない。

最近、中国などの知財関係者から聞いたケースは、特許や実用新案をめぐる侵害訴訟である。典型的な例をモデルとしてあげてみたい。

辞めていった優秀な社員が裏切る

日本企業の中国法人であるA社に勤務していた中国人技術者が、家庭の都合で仕事を変えたいので辞めたいと言い出した。A社の日本人幹部は、この技術 者を高く買っていたので、ノウハウを含めて様々な技術を教え込んでいた。また、彼の家族ともども付き合っているので絶大な信用を置いていた。

辞める理由を詳しく聞いてみれば、親戚関係からの誘いで、まったく別の業種に変えたいという。製造業からサービス業への転進である。それならば仕方ないとA社も盛大な送別会を開いて送り出した。

半年ほど経って、A社の社員からの通報で辞めていった社員は同業他社に再就職したことが分かった。しかも彼と同時期に相次いで辞めていった元社員がいずれもその企業に再就職していた。

「やられた!」と思っていたところ、あるとき、まったく知らない中国人から特許侵害で訴訟を起こされた。訴状を見て仰天した。A社が使用している技 術を実用新案で登録し、その権利をもとに訴えてきたものだ。しかも原告は、なんと辞めて再就職したあの中国人の同僚だったのである。

A社は、直ちに実用新案の無効審判を起こして対抗した。ここで大きな問題が立ちはだかってきた。中国で実用新案の無効を証明するのは至難の業であることが分かったからだ。

実用新案は、簡単な発明である。中国では、それなりの技術発明と書式が整っていればまずほとんどの場合は出願して登録となる。登録されれば権利者となるので直ちに侵害訴訟を起こすことができる。

実用新案は簡単な発明なので、簡単なだけにこれを無効にすることが難しい。ほとんど同じ技術の文献を見つけて対抗しなければ無効にならない。そのため最近は、多くの企業が自社技術の防衛のために多数の実用新案を登録し始めている。

筆者は、今年になって立て続けに同じようなケースを3件、聞いている。これは表に出ていない実例だけだが、実数は多分かなりあるのではないだろう か。中国での実用新案の権利をめぐっては、中国企業とフランス企業の間で闘った有名な訴訟があるが、その件はまた別途に報告したい。

ともかくも、日本企業を巻き込んだ知財紛争が以前とはまた違った様相を見せ始めているのである。

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