コラム

進化する中国の「不正知財活動」への対策

中国の模倣品製造進化は知財活動と表裏一体だ

中国の技術革新は、日本が高度経済成長を果たした時代の2倍から3倍の速度で進展している。筆者が初めて中国に行ったのは1999年だが、それから15年余を経てまったく違った国になってしまった。

そのころから注目してきたテーマは、中国の模倣品や知財活動の動向である。2002年ころまでの中国は、北京、上海の繁華街に行けばどこでも世界のブラン ド品のデッドコピーを山積みにして販売していた。バッグ類、ネクタイ、ボールペン、時計など有名ブランドのニセモノがあふれていた。

模倣品の第1世代はデッドコピー時代であった。

ニセモノ商品が氾濫する中国のフリーマーケット

外国から中国への渡航者が増えるにしたがって中国当局もこれではまずいと考え、取締りに乗り出した。それと並行するように出てきたのが本物まがいのブラン ドを付けた模倣品である。「SQNY」、「HONGDA」などが代表的なまがい物ブランドである。これが第2世代の模倣品である。

「HONGDA」という商標を付けた中国のオートバイ


「SHARK」「SQNY」「Caona」「HITACCHI」などを付けた模倣品

次に出てきたのが日本企業の社名や製品の商標を先に中国で登録し、中国での企業活動にブレーキをかけるやり方である。中国でビジネスをしたければ商標を買 い取ってほしいというのが本音であり、途方もない高値を吹っかけてくることが多かった。日本企業は泣く泣く自社商標を買い取ったケースも多い。

他人の商標を勝手に先に登録して買い取らせるビジネスを始めたのは、中国が世界で最初である。筆者はこれを「先取り商標ビジネス」と名付けていたが、これが第3世代の模倣品ビジネスである。

制度を使って合法化を目指した知財活動

第4世代は、日本企業の発明を勝手に出願して権利を取得する方法である。もはや模倣品ではなく、知財の仕組みを応用した権利取得ビジネスである。勤務していた日本企業で技術を習得し、それを企業の知らないうちに特許や実用新案に登録して権利を主張する。

たちが悪いのは、自分で権利化しないで友人・知人にやらせて自分は陰に隠れていることだ。辞めていった元社員やその仲間が実用新案などを先に出して権利化 し、元いた企業に対してその権利を主張する。あるいは、辞めた社員の知人・友人らが登録した権利をもとに侵害警告をしてくる。和解などを持ちかけて法外な 和解金を吹っかけてくることがある。

本格的な知財紛争を仕掛ける点でかなり進歩した不正ビジネスになってきた。

第5世代になると合法的に技術を盗むやり方が出てきた。違法性があるやり方から脱却して進化したものだ。代表的なものが、中国の新幹線に技術提供した川崎重工が巻きこまれたケースである。

北京―上海高速鉄道は、川崎重工の新幹線車両「はやて」の車両技術を供与されて実現したものだが、中国側はこの技術を元に独自の技術開発を加味して国際特許出願の手続きをアメリカなどで始めた。

改良したから問題ないというのが中国側の言い分だが、川崎重工側はモーターの出力を上げただけだ。川崎重工は、自社提供の基本技術と構造的に変わらないとして国際社会にも中国の理不尽さを訴えている。

中国の新幹線(ウイキペデアより転載)

 

模倣品調査会社がビジネス調査会社に進化

このような歴史的な流れを見ていて感じるのは、中国の模倣品製造の歴史的変遷は同時に技術進化と並行しているものであり、知財活動と表裏一体の関係にあることだ。中国で模倣品被害にあっている日本企業の対応策もこうした動向に対応するので進化せざるを得なくなっている。

対応策の進化を裏付けているのが模倣品を調査して摘発を支援する中国の調査会社の事業の様変わりだ。先日、上海の大手調査会社のQCACインターナショナル・コンサルティング社の藩徳山総経理ら3人のスタッフが筆者を訪ねてきた。

左端から藩総経理、安達孝裕氏、一人置いて王敏湘さんらQCACのスタッフ。

QCACは、多くの日本企業の模倣品摘発で調査と証拠固め、中国当局への摘発働きかけなどで実績をあげてきた。筆者は同社と10数年の付き合いになるが、 多くの摘発事例を聞いてきた。もちろん、調査会社は顧客の守秘義務があるので個別の内容は明らかにしないが、中国の一般的な調査会社の動向を知るために非 常に参考になった。

調査会社の活動動向は、同時に不正知財活動、不正企業活動を反映しているからである。しかも中国の場合、通常なら公安警察がするべき仕事を調査会社が顧客から委託されて行っていることに特徴がある。

典 型的な摘発の方法は、まず模倣品が流通している現状を調べて模倣品を抑え、次に流通経路をたどっていき、生産現場を突き止める。生産現場が分かると、そこ に関与している従業員らから情報を取って在庫品の確認や生産現場を確認し、中国当局に証拠や情報を伝えて摘発してもらう。

ビジネス調査という新しい業態が出てきた

藩 総経理は、元中国空軍にいた軍属であり、その人脈を使っての摘発は迫力もあり効果があった。しかし今回のインタビューで知ったことは、今や従来のような模 倣品摘発から進化し、ビジネス調査に重点が移ってきたことだ。ビジネス調査とはにわかに理解できなかったが、説明を聞いてよくわかった。

たとえば元従業員が技術を習得して辞めたあと、その技術で製品を製造して販売した場合、提携する法律事務所や公安部門とも連携しながら情報を持ち出した元 従業員の不正の証拠固めを行う調査である。自社の社員の中でも、不正をしているかどうかを調べてほしいという依頼も少なくないようだ。

中国では中国企業をパートナーに選ぶ場合、信用調査が非常に重要だ。表面的には優良で信用できるように見えても実態は分からない。経営者の本当の姿、企業の実際の活動などを調べないことには、連携できるかどうか判断に迷うことが少なくない。

日中双方の企業の社長同志は信頼関係を結んでいても、その下に仕える幹部社員や従業員は本当に信用できるのか。そこまで調べないとしり抜けになる可能性もあるという。

また、中国では工場内の物品、製品、材料などがよく盗まれたり紛失したり、帳簿上の数字が合わないことがある。工場は頻繁に社員が入れ替わるので、調査しても未解決に終わることが多い。こうした悩みにも不正の可能性のある部門の人物調査をして原因を解明していくという。

QCACのビジネス調査は、これまでの模倣品摘発調査をさらに進化・拡大したものであり、従来のようなニセモノ製造摘発から知財や経営管理、社員管理など に広がってきたことが分かった。これは中国の製造現場や産業界が進化してきたために起きている不正活動に対抗するための手段の手助けである。

また、模倣品摘発でも、通年の調査によって被害状況を的確につかみ、行政摘発だけでなく、証拠を保全して損害賠償の民事訴訟も行うという。調査会社の営業内容がこの数年ではっきり様変わりしてきたことを知った。

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