コラム

警戒症

最近知財強化を進めている企業でのお話です。そこに新たに設けられた知財部門の担当は様々な技術部門に出かけ知的財産の重要性を喧伝しています。

複数の開発者から特許調査や発明相談、共同開発や委託・受託研究の時の知的財産関係の項目をチェックするなど順調に相談事も来るようになり、徐々に意識が浸透していることは明らかでした。

研究所の帰りのメールバスの中でした、ある案件で、技術屋さんからの発明相談に対しやりとりをしていた時のことです。ちょっとした切っ掛けで、ボソッと話された中に将来に大きく化けるかも知れない発明の匂いを知財担当者が嗅ぎ取りました。

この知財担当者は、これからの技術だから、しっかりと発明の内容を聞きだそうと、改めてヒヤリングの日程だけをその場で決めました。

いよいよ、約束の日に発明の内容を確認に職場まで出掛けました。口頭で話を進めている内に、発明内容の充実を図り、現時点で発明者が描いている、または実現手段として意識していることを徐々に追求すべく聞き出していったのです。

そうすると、はじめは口頭で説明していた発明者が、少しずつ紙に書き出しました。ある程度の内容が示されると、その具体的なやり方を聞きださねばなりません。

そのため、それはどのように実現する予定ですか・・・。という核心に触れる技術内容にまで質問が細かくなってきたのです。すると発明者も自分の頭の中だけ で説明するだけでなく、ちょっとした資料を探し出して見せたり、確認したりするようになりました。疑問を投げかけ質問に答えている中で、あるファイルへの アクセスが多くなりました。知財部門の人はそれを見逃しません。ちょっとその資料を見せて頂けませんかといったところ、この資料は今後の研究テーマの概要 を記載したもので、部外者にはお見せできませんとの回答があったのです。

この知財担当者は、愕然として開いた口がふさがらなかったと、私に後日お話してくれました。社内の知財担当者にも内緒にしなければならないといった出願前 には口外無用でお願いしますと日常言っていたことがここまで徹底され、出願前の相談時でも当事者にも伝えない、見せないという意識は相当なものです。

発明者には、我々知的財産部門の人間は、当然のことながら秘守義務を負っており、聞いたお話の内容を、弁理士さんなどの出願業務や出願前の調査を行うサーチャーさん以外に伝えることはないとコンコンと説明をしたそうです。

そうしたら、発明相談を依頼した技術者は、研究部門の長である課長の許可がいると言い出したのです。課長にその場で許可の確認をして欲しいと頼んだのです が、正式に文書で依頼し、見せる許可をもらってほしいと譲らなかったのです。知財担当者は、当日不在だった課長に後日電話で話をし、発明者に差し支えない 旨が伝えられました。

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