コラム

評価

ある通信システム、コンピュータシステムを中心にしたビジネスを展開している会社の話です。1967年にこの会社は、アメリカのベル研究所の上級の研究員をスカウトして、研究部長として迎え入れました。

当時のベル研究所は、世界有数の研究をしており、通信システムの将来は、ここの研究成果で決まるといっても過言でない状況でした。当然10年、20年先の 通信システムと、それに必要となる機能デバイスの総合的な研究が行われていたのです。そうした先端も先端、世界でも一番最先を行く研究をしているところの 人が会社に来て、上司になるとなれば大変なことが起きそうな予感がします。

当時の日本の企業の研究部隊は、事業部門のちょっと先を行く研究をやっているのが実情で、それこそ世界の通信システムの標準となるシステムを目指した基礎的な研究などというものは、やりたくても、当面の課題を片づけてからといった状態だったそうです。そこに、画期的な研究のメッカから、大変な実力と実績を持った人が来るのですから、なんだそんな事をやっているのかと、呆れかえられるのが落ちだと思う人が多かったようです。戦々恐々とした心情で部長の赴任を待っていたのでしょう。

そうした中で、ある研究者は、特許出願を計画していた案件が5件ほどあったといいます。実用的なアイデアであることに自信はあったのですが、学問的には けっして高度ではなく、新しい研究部長が赴任してきたら、どうせ笑われるのが落ちだと考えたのです。そこで、急いで発明を説明した書類を作り上げ、出願依 頼手続きを終えてしまおうとしたのです。早速書類を整えて、今の部長の時代に提出し、知的財産部門に送り込んでしまえと計画し実行したのです。

そうこうするうちに、噂の部長が赴任してきました。着任から2日目に、この研究者は新任の部長から呼ばれたのです。何のことかと、部長のところに出掛けたら、机の上には先に急いで作った出願依頼書類がのっているではありませんか、せっかく早く書類を提出したのに、前の部長は決裁をしてくれてなかったのです。策略は失敗してしまったのです。

し かし、新任部長は口を開くと「あなたの発明を読みました。企業にとってこうした実用的な技術は重要です。出願手続きをとりましょう。」といわれたそうで す。新任の部長は着任したその日に、研究者の提案した出願依頼書類を家に持ち帰って、目を通してくれたのです。そして、的確な評価をしてくれたのです。企 業のマネージャーとして、研究員の特許出願がどのようなものであるか、技術の高度性だけでなく、実用性を高く評価していることは、技術開発の管理をする立 場の人として当然のことではあります。ところが、ベル研究所の一級の研究者だった人が、そうした評価をしてくれたことで、研究者は大変に感激したといいま す。

発明の将来性を的確に評価することは、容易なことではありません。しかし、限られた費用を有効に活用するためには、マネージャーは評価から逃避できないのです。

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