コラム

筋が良い

この数年は電気通信、コンピュータメーカの不振、さらには総合家庭電機メーカとして体力がありそうな
製造業の営業不振が何かと話題になります。
ハードの設計や量産能力にアジア系メーカが強みを発揮してきて、国内メーカの不振を招いていると
解説する人もいます。そうした中で、事業の見直しで体力の維持に努め、いわゆるビジネスの断捨離である
リストラクチャリングが盛んに行われます。
そうした話しを耳にすると思い出すのが、20年以上前ですが、ある電気メーカで特許情報の調査や分析を
数十年も経験していた仲間です。定年間際になり、急に人事部門に配転になったのです。

私はてっきり肩たたき人事で、現場から離れ、次の職場なり、新しい会社なりを紹介される前のバッファー
だろうと思った次第です。当時そうした人事が、私が勤めていた会社でも良くあったのです。
そして数ケ月後に会合に出てこられたので、それとなく何処かに変わる話でも出たのかと聞いてみましたが、
今までと同じだよという答えでした。
詳しく聞くと、その会社で新しいビジネス計画やプロジェクトを作る際に、適格な人材を社内から集める
ための仕事をしていると言うのです。特許経験者が人事にというので、ちょっと結び付かなかったのですが、
彼は新事業のスタートに当たり、適材を特許情報の検索結果を見て、ターゲットになる人を探す仕事を
していたのです。
その発明者の技術課題に対する取り組み方、発明するセンスを見極めたと言います。最終的には彼が面談し、
当人の了解が得られれば、現場の上司を説得して新しい仕事に配転させることになります。
人事部門の影響が強く、妥当で説得力を持たないと社内でも納得する人事にはならないでしょう。

筋の良い発想や発明をする人を見出すために特許情報が使われていたのです。社内に適材がいない
場合には、他社や大学に研究機関にまで拡大します。企業の人事部門のネットワークも少なからず存在
していたようで、自社の定年を迎える技術者の再雇用先の斡旋もしていたそうで、古希を迎えるまで
そこの会社の人事部門に10年以上勤務していました。
私も特許情報には何かと縁が深い仕事をしていたので、数多くの発明に接する機会が多かったのですが、
ある発明者の功績が鮮明に頭に残っています。

1956年頃にコンピュータのデータ記憶装置として盛んに使われていた磁性体のリングに電流を流し記憶する
コアメモリがありました。その基本的な発明は1951年5月に出願されアメリカ特許第2736880号
として登録されています。その1年後の1952年8月にはコンピュータを使った工作機械の制御をする
数値制御装置の基本特許が発明されています。これはアメリカ特許第3069608号として登録されました。
ほゞ1年の間に全く違う分野で相次いで基本的な技術の発明がなされたのです。

この二つの発明はJay W. Forresterさんが発明者です。デジタルコンピュータの部品からシステムまで
筋の良い発明を生み出した素晴らしい人です。

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