突撃シンドローム
10年ぐらい前からでしょうか、繁華街や地下街の人込みで、故意か無意識か分からないのですが、反対から歩いてきた人にド~ンとぶつかるケースが増えたそうです。「突撃シンドローム」というのだそうですが、自分の歩いて行く方向に人がいようが、来ようが構わずに、突き進むのです。日本経済新聞の記者 が、東京の渋谷や大阪の梅田の交差点で観測したそうですが、ぶつかり、正面衝突をした人にインタビューをしたところ「だって、向こうからぶつかってくるのですよ。こっちもおなかに力を入れて当たらないと吹き飛ばされますよ」といったとか。何ということでしょうか。
他人は眼中にないという情景は私も経験したことがあります。電車を下りるときに出口に仁王立ちして動かない人が確実に増えています。人が下り切らない内 に、押し退けて飛んで入ってくる人もいます。朝の改札口で肩がぶつかりそうなのに身体を横にする風でもなく、私がひょいと身を交わしたから良いものの、そのままだったら衝突しているケースは週に一度や二度ではありません。男性に多いと新聞にはありましたが、そんなことはありません。女子学生や若い女性にも 多いのです。大きな荷物をぶつけて歩いています。避け損なうと何をするんだという目つきで睨まれることもあります。電車やバスで吊革につかまっていても力 強く押してくるので振り向くと若い女性で、顔が合うと睨まれてしまったことも少なくありません。電車が揺れてこちらが押してしまおうものならすごい剣幕で見られます。
三保の松原に向かう通りでは左側通行になっていました。昔の侍が細い道を通るのに右側通行をすると腰に差した刀が触れ合いいさかいになるのを防ぐ知恵だそうです。
現代の都会での人口が過密現象のせいなのか、世の中のスピードが上がったり忙しくなって他人に目をやる余裕がないからだという説や、躾けがなってないからだという説があるそうです。
何か特許の世界にも似たことを感じることがあります。開発が盛んな分野では特許出願の数もどうしても多くなります。研究開発のスピードが上がると、他人が何をやっているか、どういう特許があるかを構っている余裕が無くなってしまう。製品の開発にあたって他人の特許があるかどうかなど、目をふれず一目散に販売にこぎつけるべく努力するなんてことはないでしょうか?。
人がいないところならそれ行け、やれ行けで良いのでしょうが、特許の世界での「突撃シンドローム」は、衝突すると、余程お腹や腰に力を入れていても、とんでもないことになることは世の中の事例が物語っております。マーケットが大きければ、大きい程他人の特許に衝突したときの衝撃は多大なものになります。何 億円という特許の実施料や損害賠償金がニュースになるほどですから、無意識にド~ンとぶつかったという訳にはいかないのです。
数が多いとか、スピードが早くて調べようがないという声も聞こえますが、よける工夫をしないと、物騒な人込みに、裸で出掛けるようなことになりかねません。