コラム

空洞化

このところ、知的財産の世界は何となく元気が無いような気がします。

先日もある弁理士さんからお酒の席とは言え、最近の新たな出願の依頼が激減しており、事務所を継続すべきかどうかで大変悩んでいるとのことでした。数年前から特許庁への出願件数が減っており、この弁理士事務所の個別の問題ではないようです。

出願減少の要因の一つに挙げられているのが、開発力の不足だと言います。特に電気業界を見ると軒並み元気がなく、収益の減少を伝えるニュースや、いくつかの不祥事もありますが、何だか新商品や目新しい顧客の財布を広げさせるような魅力ある商品が少なくなっている傾向は確かにありそうです。iPhoneのようなユニークな商品が、なぜ日本でできないのかという論調や指摘も少なくありません。

東南アジアに製造拠点がシフトしてきているのも一つの要因に挙げられています。大量生産によるコストダウンだけでなく、品質の向上は目覚ましいものです。世界の生産拠点のアジアへのシフトは止まらず、その昔、アメリカが空洞化したと伝えられた状況が日本の社会にも同じように到来したともいえます。

しかしながら、アジアの生産拠点で使われている部品や材料は日本のメーカによって作られているモノが多いことは間違いありません。この部品や材料の高機能化が、アセンブルメーカの多い、アジア諸国で生産されている商品の高品質の実現に大きな影響があるというのです。

アジア系のアセンブルメーカは、日本の高い設計能力を生かして、商品の開発企画設計にまで手を伸ばしつつあります。日本の生きる道はないのでしょうか?

最近の話題で、人工知能や精密な制御技術が話題になっています。人工知能の代表ともいえるコンピュータでは、ディープラーニング(深層学習)の技術が盛んで、プロの棋士の様々な思考過程を学習したコンピュータが、世界的に有名な棋士に勝利したニュースも流れています。グーグルやフェイスブック、トヨタ自動車などもこの人工知能に着目して、自動車の自動運転システムなどの開発に本格的にチャレンジしてきているとの話題を目にする機会が多くなりました。

1980年頃には自動車産業は、エンジンも車両を形成する技術も完成の領域であり、新たな開発はない。コストダウン以外生きる道はないと盛んに言われていました。

その自動車メーカが、電気自動車、ハイブリッドシステム、燃料電池車、さらには自動運転技術と,目まぐるしいほどの新技術開発のテーマを持って様々な分野にチャレンジしています。2015年の年間特許出願件数はトヨタ自動車が、キヤノンに続いて2位をキープしています。長年電気メーカが占めていたベストテンの常連と競っています。最近日本経済新聞社がまとめた企業の新人採用計画でもトヨタ自動車は2位です。

どの産業でも,新たなチャレンジテーマがあることを物語っています。開発の分野がシフトしてきていることに気付く必要性がありそうです。技術開発テーマが存在するからには、発明が世の中から無くなってしまうことなどあり得ないのです。

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