コラム

税関取り締まり

急増した知財侵害品の輸入差し止め件数
財務省がこのほど発表した平成29年の知的財産権を侵害する輸入物品の差し止め件数が、前年比18%増と急増していることが分かった。
統計と画像はいずれも、財務省発表データによる。
http://www.mof.go.jp/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2017/20180302a.htm

差し止め件数は3万627件であり、史上最高だった平成26年の3万2060件を上回り過去2番目となる。
過去2年間は減少に転じていたものが昨年、急増したことがわかる。

知的財産侵害物品の輸入差止実績の推移

一日平均で84件、1300点以上の知的財産侵害物品の差し止めをしていたことになり税関業務が忙しくなっていることが予想できる。輸入差し止め価額は、推計で113億円と発表されている。

侵害品の仕出し国のダントツが中国
差し止めとなった侵害品の仕出し国は、中国が圧倒的に多い。中国は近年、知財大国から知財強国へと知財政策を急進展させているが、依然としてニセモノ製造大国にとどまっていることも分かった。

中国が国家をあげてニセモノ製造の撲滅を目指し、取り締まり体制と罰則を強化しているにも関わらず、
ニセモノ大国としていまなおダントツの位置にあるのは、次のような理由が考えられる。

第一に、ニセモノ製造業者が、取り締まりの網をくぐるための対策をますます進化・巧妙化させているからだ。ニセモノ製造工場の周囲には監視カメラをめぐらせ、当局の取り締まりの警戒を怠らない。
当局が踏み込んでくることを監視カメラでいち早く察知し、証拠類を素早く隠匿する狙いがある。

第二に、ニセモノ製品は、在庫の有無で立証されるので、在庫を置かないように対策を立てている。
ニセモノは製造するとすぐにトラックなどに積み込み、トラックを倉庫代わりにして移動している業者もある。

第三は、輸出手口の巧妙化だ。中国では、ニセモノを輸出するさいの検査体制も厳しくしているが、最近は輸出国を偽り、迂回させることがあるという。日本への輸出でも、いったんは別の国に輸出し、そこから改めて日本向けに出す玉突き輸出である。第三国からの輸出なら中国発でないので輸入国の税関の警戒を緩められるとの思惑だ。
ひところ、中国では地方保護主義が跋扈し、たいした産業のない地方では自治体、裁判所なども一体となってニセモノ製造を許す風潮があった。しかし習近平政権になってから、地方保護主義も厳しく制限されているので目立った活動はできなくなっているはずだ。
それでも中国はニセモノ製造大国に君臨できるのは、国が大きすぎて取り締まりを徹底するにも時間がかかるということだろう。中国のニセモノがいつどのようにして退潮するのかこれからも注意深く追跡していきたい。

商標権侵害が圧倒的に多い
輸入差し止めの侵害で圧倒的に多いのは商標侵害で、件数で全体の98パーセントを占めている。

最も多かったのはイヤホンなど電気製品
輸入差止件数を見ると、財布やハンドバッグなどのバッグ類が12,727件で38.8%となり、前年比18.6%増となった。次いで衣類が4,581件(同14.0%、同18.3%増)、靴類が3,974件(同12.1%、同51.9%増)、
スマートフォンケースなどの携帯電話及び付属品が3,633件(同11.1%、同18.7%減)となった。
輸入差止点数では、イヤホンなどの電気製品が116,999点(23.1%、前年比516.4%増)と大幅に増加している。次いでスマートフォンケースなどの携帯電話及び付属品が65,085点(同12.8%、同13.0%減)、プリンタ用インクカートリッジなどのコンピュータ製品が41,944点(同8.3%、同78.5%減)、衣類が40,671点(同8.0%、同13.8%増)と続いている。

税関当局によると、イヤホンなどの差し止めが増えたのは、「米アップルなどの権利者が、侵害品の特徴や識別方法を事前に税関に申し立てたため」としている。このように当局に事前に相談することで被害の拡大を食い止めることができることを示している。

写真は輸入差止めが物品(いずれも財務省HPから)

イヤホン(意匠権) バッグ(商標権)

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