知的財産仲裁
最近の話題の一つで、アジアで初めての国際的な知的財産紛争の仲裁機関が2018年9月に東京に開設される
というニュースが伝わっています。一般社団法人東京国際知的財産仲裁センターという所です。
知的財産関係の紛争を1年で仲裁する機関です。
知的財産関係の紛争処理は当事者間での交渉からスタートすることが多いのですが、相互の主張に
納得がゆかなくなると、第三者の判定に頼ることになります。
そのためには特許庁における裁定、裁判所での判断と複数の対処方法があります。
日本でも知的財産専門の裁判所、知的財産高等裁判所があります。東京高等裁判所の特別の支部と位置付けられ,知的財産関連の専門的な事件処理に密接に関係する案件を処理するために2005年に設けられました。
特に特許などは技術内容の判断に加え、特許法などの法律解釈の両方の判断が必要になりますので、
一般の裁判所での判断よりも的確な判断がなされることに成ります。
しかしながら、裁判所の判断には、その判断の厳密さゆえにどうしても判決が出るまでには長い時間がかかります。今回の東京国際知的財産仲裁センターの設立、運用にもかかわることになっているランドール・レーダー氏(元米国連邦巡回控訴裁判所長官)によると、裁判は「思い出を裁く」とまで表現されています。訴訟大国とまで言われる訴訟が多い米国で、数々の裁判を行ってきた当事者の発言としては重みがあります。
裁判では多くの証拠の開示が求められ(ディスカバリー制度)、トラック一杯とも云われる証拠書類が出され、相互の書類の精査だけでも大変な時間がかかります。
夫々の主張を、証拠を元に判断するためには仕方がないことです。
さらに裁判は特許を侵害されている国ごとに起こさねばならず、その労力と費用は多大なものに成ります。
そして世界各国で判決が出るころには提訴された商品は既に市場には出回っていない旧機種のモノが多く、まさに「思い出を裁く」というビジネスの上では既に終わった過去の遺物の処理と言っても過言ではないのです。
裁判所でもある程度整理ができて相互の主張も出きったところで、和解を求められ、最終判決を待たずに紛争を終了することも多くなっていますが、過去の案件でもあり、相互の主張が、こじれた場合にはメンツがあって和解に応じないことも少なくありません。
ビジネスを進める上では、現在問題になっているケースを、短期間で決着させて、次なるビジネスフェーズに
行きたいと思っている当事者も少なくありません。
国際間の争いは複雑で裁判にかける前に、中立的な第三者の判断を仰ぐ機関は存在します。
世界知的所有権機関(WIPO)の仲裁調停センターや、国際商業会議所(ICC)の国際仲裁裁判所などがあります。これらの機関と同様に国際的な仲裁判断の承認及び施行に関する条約(ニューヨーク条約)に基づく国際的な権利の紛争処理を一括して行う、アジアで初めての国際調停機関である東京国際知的財産仲裁センターが活用され国際的なビジネスをめぐる知的財産紛争の解決の一助になることが期待されます。