コラム

真珠の真実

真珠ネックレスブームだそうですね。ネックレスは同じ大きさで、同じ光沢の真珠の粒をたくさんならべているのですから、大変高額な商品です。ブームなどといって、われわれがどうやら購入できるのも養殖で真珠が作られているからでしょう。

そもそも、天然にいるアコヤ貝などには、必ず真珠があるわけではなく、真珠そのものが、大変稀にしか発生しないのです。天然のもので、ネックレスを作ると か、同じ大きさのものを集めるなどということは、世界のどこの国の王様やお姫様でもできなかったのです。こうしたことができるようになったのは、養殖のお かげです。

真珠の養殖が日本で発明され、商業化されたことは、ほとんどの人がご存知でしょう。そして、発明者は御木本幸吉さんであると教わったものです。しかし、現在の養殖真珠に使われている方法は御木本幸吉さんの発明したものではないというのです。

ここでいう真珠は天然のものと同じからくりで作られ、現在の養殖真珠の主流になっている「球形遊離真珠」のことです。

御木本幸吉さんが養殖真珠の発明をして、日本で最初に特許を取得したことは事実です。ところが、この特許は「半球貝付真珠」といわれる真珠だったのです。この養殖方法では、真円の真珠はできなかったそうです。

貝と貝の体内の間には外套膜があり、この外套膜と貝の間に真珠の核となる素材を入れて真珠を作る方法が、御木本さんの特許第2670号だったのです。この 方法では、貝殻の内面に付着する形で真珠質が作られるため、球形のものは作れなかったそうです。必ず半球形になるので、張り合わせて真珠らしく見せていた のだそうです。

球形の真珠は、貝の本体の中に入った異物(真珠の核)と外套膜の作用で作られるそうです。だから天然では異物と外套膜がたまたま体内に入った時だけ形成されるため、確率は極めて小さかったのです。

このことを突き止めたのは、東大の箕作佳吉博士の指導を受けた農商務省の技師であった西川藤吉さんです。御木本養殖場に派遣され、後に幸吉さんの次女と結婚。

特許29628、29629、29630号「真珠形成法」です。明治40年10月24日の出願で大正5年6月20日に登録になっています。西川藤吉さんと 叔父さんの西川真吉さんの二人が発明者です。この一連の特許は貝から真珠袋を構成する細胞(外套膜)を取り、貝の体内の組織の中に入れる方法です。核とな る物質とともに入れるなどの方法が、3件の特許として成立しています。現在なら多項制で1件で出願されたものでしょう。これが本当の意味での完全な、天然 のものと同じ球形の真珠ができる特許なのです。御木本幸吉さんの発明とは全く異なるものですが、これを御木本幸吉さんの発明としていた時期があったようで す。

しかし、真実はこうだとした本「真珠の発明者は誰だ?」(久留太郎著;勁草書房発行)が出ています。著者の久留太郎さんは、御木本幸吉さんの曾孫で西川藤吉さんの孫にあたる人です。

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