そよ風243
/東方幸男
発明唱歌
唱歌という文字から連想するのは、文部省唱歌ですが、今でも小学校では文部省唱歌があるのでしょうか?。比較的単純な音階で、だれでも歌いやすいようなものがそろっていたように思います。
今回は、100年以上も前の明治40年(1907年)に制定された発明唱歌を、ご紹介しましょう。当時の募集要綱によると、「小学生児童の発明思想涵養」を目的として、歌詞を募集したようです。
第1等賞当選唱歌は東京の小石川に住んでいた「室田 有」さんの作品でした。
タイトルはずばり「発明」です。以下に引用します。(ただし、一部変体仮名を現在仮名に変更した部分があります。)
発明 | |
一、 | 蜂は蜜とるすべを知り 蜘蛛に網張るたくみあり |
萬の物のをさといふ 人には何か成らざらん | |
二、 | 鷲の翼はあらねども 鯨の鰭は持たざれど |
人発明の智慧により み空をかけり海走る | |
三、 | 物豊かなるあめつちは 寶積みたる庫なれど |
うとき人には見えずして 唯発明の鍵にあく | |
四、 | 蒸汽機関ももと問わば 見よただ湯気の力のみ |
心用ふる人の手は 用なきものも寶とす | |
五、 | 工風に人のさちは増し 発明に世は開け行く |
工風発明数増さば 君が代栄え国富まん | |
六、 | あたら土中に埋むれば 黄金も貴きものならず |
人の寶の智慧もまた 働かさずば何かせん | |
七、 | 人生僅か五十年 夢と過ごさば夢にして |
三日に死する蝉のごと はかなく世をば終るべし | |
八、 | 思こらせる発明の 益ある品の記念碑に |
いさをを深く刻みなば 消ゆる時なく歌はれん |
少しばかり、時代がかっていることは当然ですが、100年も前にこのような歌が歌われていたと思うと、何となく愉快になります。
学童がこのような歌を口ずさみ、実践していたら、日本はもっと変わっていたのかも知れません。長く歌い継がれるような楽しい曲がついていればの話で すが・・・。この発明唱歌を見ると、課題の先取りなどいくつかは、なるほどと今でも通用することや、考えさせることがあるように思います。
歌心ある方は、新しい平成の世の「発明唱歌」(このいい方が既に古いかな)に挑戦して見てはいかがですか?。もっとも、そんなことより、世の中の先を行く発明に頭を使う方が、望ましいことかも知れませんが・・・