コラム

発明の評価

このところ時間的余裕があるシニアが、向かう先がカラオケだというニュースが伝わり、関連の会社の株がもてはやされているらしいです。

そこで思い出したのがこのカラオケの発明の話です。皆さんが発明をしたものを、知財部門に提出する前にちょっと考えた方が良いと思われる事例です。

一口で言えば通信カラオケをISDN(統合ディジタルネットワークで既にサービスは中止)の電話回線を利用して行うというものです。公報を見ると、たった1頁程度の説明と、図面もブロックダイヤグラム一つしかありません。

この複雑な世の中で、発明をこれだけの紙数で説明しているとなると、大変な基本概念に関する発明かなと思ったのですが、そうでもありませんでした。 どう見ても、それ以上の内容があるとは読み取れませんでした。特にISDNの回線での送り方や、情報内容として何んの変哲も工夫もないのです。ISDN端 末からリクエストが送信され、センターから回線を通して端末に音と絵が送られる。普通の通信カラオケです。

この発明は誰でも知っている電子機器メーカの出願でした。1992年3月の出願です。既に当時から行われていたような出願が出てきたから驚くのです。

この会社は出願前に先行発明の調査をしていないのではないか? 何を特徴として発明と主張しているのか、どうも理解に苦しむのです。この程度の発明 をこんな時期にしているとは、知財部はおろか、作成を依頼した特許事務所の弁理士は何を考えているのだろうと率直に思ったというのが、この話を教えてくれ た課長の感想でした。

私も見てみましたが、なるほど、中身がありません。物笑いのタネになり兼ねないなと同感でした。この会社は一時大変な数の出願をして有名になったと ころです。社内でも薄っぺらな出願をたくさん出しても何の足しにもならないと、深く反省して、この出願のちょっと前から計画的に戦略的に出願をするんだと 漏らしていたところです。上手の手から水が漏れるということもありますが、まだまだ方針が行き渡っていないのでしょうか?。それとも発明評価や特許管理の 目が行き届かないのでしょうか?

他山の石のたとえもあります。みなさんの会社でも同じようなことで、他社の話題になっている発明はないかと、フト頭の隅をかすめました。ここは一つ反面教師とばかり話題を提供することにしました。

ところで、ある通信カラオケの会社の知財部の人から聞いた話ですが、何万曲とある作品にあった絵をつけるのは大変な投資となるそうです。そこで、安 上がりにするために、風景なら山と川と谷や都会、それぞれ朝、昼、晩、晴れ、曇り、雨と用意しておきます。また、酒と女と別れとネオンなどといった組み合 わせが多いので、その辺を何パターンが作っておくのだそうです。

数千ほどの絵で数十万の曲をカバーしているとのことでした。確かに、通信カラオケではイマイチ曲や詩と絵が合わないなと思うものがあることが気になって仕方ないのです。いや~夢のない話を聞いたものです。

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