発明の評価
発明が生まれ、それを出願し権利化するまでには、それ相当の経費や人件費が掛かります。
このため多くの企業では、会社のビジネスを進める上での発明の位置づけを見て評価をしています。
だいぶ前になりますが、発明の評価ではポートフォリオを組むべきだという指摘がありました。
ポートフォリオは株式に対する投資の、分散や組み合わせをすることです。株式市場で取り扱われる
投資対象の会社を仕分けしてグループを作ります。例えば、売り上げや利益がどんどん伸びている会社、
配当が高い会社などの、現時点でそれ相当の利益を与えてくれる会社を一方に分けます。
他のグループとして現在は、さほどの利益は得られないが何年か先に株価が上昇して売買益を生む
可能性がある会社、今後は配当や株主などへの利益分配を志向する会社に区分けするのです。
そして、両方のグループの複数の会社を組み合わせて投資分散することでリスクを少なくし、
利益を確保する試みです。
発明の評価にも現時点での発明の価値、将来性の両面で発明を分けてポートフォリオを作ってゆくべきで
あるとする考え方です。
つまり会社のビジネスを踏まえ、現在の事業、将来の事業の方向性などを考慮して、今後のその発明の
生まれたビジネスや技術が、会社の戦略上で重きをおく技術分野なのか、今後はそれほどの利益を会社には
もたらさない分野で軽視しても良いかなど、ビジネス面での重要性を見て出願すべき発明か、権利化すべき
発明かを見極めるのです。
金のなる木という表現がありますが、現時点で会社の売り上げも大きいし、利益への貢献が大きい
ビジネスから生まれてくる発明は、どうしても評価が高まります。しかしそうして事業分野から
生まれてくる発明だけを出願し権利化していては、その分野が衰退していってしまえば、権利が
あっても活用できるチャンスが少なくなってしまうのです。そうしてビジネスの成長と衰退の可能性を
考慮して、これからの会社の屋台骨になるかも知れない事業分野の発明を見落とさずに、一定の割合で
出願し権利化をしてゆくことを、発明のポートフォリオを組むという訳です。
ビジネス面での投資と、発明の評価は一体になって行わなければなりません。
儲け頭のビジネス分野の発明は誰でも出願に異を唱えることはないでしょうが、これからの分野の発明を
どう見出し評価してゆくかは困難を極めます。
純技術的評価は、ユニークで他に代替手段が出てこない技術であるか、発明の課題を解決する手段は
複数あり得るのか、また権利として見た場合、各社が必須となる権利が取得でき、有効な特許として
今後の収入源になる。または他社とのライセンスを有利に進めることができるかなど技術・権利面での
位置づけを見ます。
当然のことながら、事業戦略面で重視される発明で、技術や権利行使の側面で高い評価が得られる発明は
積極的に権利化を促進すべきでしょう。発明の権利化を図るべきか否かを判断して、ビジネス全体の
バランスを考慮して発明や権利のポートフォリオを組みます。