産業構造激変の時代をどう生き延びるのか
くっきりと分かれた好不調の業界
コロナ禍の時代に入ってから産業構造の激変が押し寄せている。2020年4月から6月まで2020年の第2四半期の決算の集計が発表されているが、業種によってくっきりと好不調が出ている。
業績停滞をもろにかぶったのは、素材、エネルギー、自動車、空運、小売、サービスなどだが、逆に好調だったのは電子機器と情報通信である。知的財産の分野から見ると、日本得意の素材、自動車関連はがっくりと落ち込んだもので、特許出願件数は減少に向かっている。
世界の企業でも3社に1社が赤字になった(日本経済新聞8月1日報道)。世界的に見ると、4~6月期で主要企業4500社のうち3割が増益と言う。
NY株式市場の異変
世界の株式市場の動向をリードしているニューヨーク(NY)株式市場のダウ平均株価を構成する銘柄(30社)が、8月31日に一部替えられた。世界製造業の覇者だったGE(ゼネラル・エリクトリック社)が、先ごろここから外されて話題になったばかりだが、今度は1928年以来、最も古くから組入れられていたエクソンモービルが外された。
代わって組み入れられたのは、セールスフォース・ドットコムと言うIT関連企業である。クラウド型の法人向けソリューション事業を展開する企業で、連絡先や購入履歴等の顧客情報を一元管理し、営業活動の向上やマーケティングに活用する業務アプリケーションをクラウド上で提供している。営業支援、顧客サービス・サポート支援、マーケティング支援、コミュニティ管理支援などを運営する企業で、日本にも入ってきて業績を拡大している。M&Aで企業を大きくしてきたのも、いかにもアメリカ的な新興企業である。
https://www.salesforce.com/jp/
クラウド時代に頭角を現す企業
日本の企業活動がまだコロナ禍から脱出していないが、世界でも最もコロナ感染症者の多いアメリカでは、IT関連企業が急速に活況を呈してきた。史上最高値を更新しているナスダックの株価指数を見るとよく分かる。
情報通信関連の企業が先導しているもので、とりわけコロナ禍の社会変革に合わせて頭角を現してきた企業群が元気に先導している。
たとえば中小企業がウエブサイトの作成から在庫管理、配送、決済などのECストア運営サービスを提供しているショッピファイは、カナダで起業しナスダックに上場したものでいま、世界で爆発的に広がっている。もちろん、日本にも上陸してきた。
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署名・ハンコ文化を変えるかデジタルサイン
欧米では、すべての契約書や書面にはサイン(署名)が必須である。サインのない書面は効力がないのが普通だ。サインに代わって日本ではハンコ(判子)文化である。印鑑のない書面は効力を持たない。
ところが、コロナ禍で対面する機会がものすごく制限されてしまった。このためメール上で書面が往復しても決済する署名やハンコができない。そこで登場したのが電子署名ソフトウエアである。印鑑や直筆の署名にとってかわる方法である。
電子署名によって、契約までの時間短縮、書類郵送の手間の削減などの利便性が重宝され、コロナ禍を機会に定着する勢いで広がっている。この代表的な企業がアメリカのナスダックに上場されたドキュサインであり、日本では弁護士ドットコム株式会社の2社である。
株価チャートもコロナ禍以降にうなぎ登りの上昇であり、ナスダックの寵児と言われている。世界の標準化を目指している。ただ日本では弁護士ドットコムなどが、日本独自のハンコ文化の中で電子署名をどう定着させる。ユーザーも注目している。
ドキュサイン株価チャートの紹介:http://nasdaqchart.com/nasdetail/DOCU
弁護士ドットコムHP: https://corporate.bengo4.com/
製造業からサービス業へと大転換
コロナ禍をきっかけに勤務状況が激変し、オフィス環境も激変した企業が多い。小売り、レストランは休業に追い込まれたり、極端な売り上げ減に悩まされているケースが目立つ。
筆者の知人の中華料理店も、来店客が減少して売り上げが減ったため、売り物の水餃子をネットで販売を始めた。冷凍で届ければ調理の手間も省け、美味しければ売れるということで、売り上げ減をカバーすることができた。
製造業は、アイデアと品質の勝負であり、知的財産権で囲みこまないとビジネスとして成功しない。コロナ禍の前と後で何か変わったことがあるだろうか。流通機構ががらりと変わった来たので、製造元が変わらないはずがない。まだ、そこまで気がついていないかもしれないが、設計ソフトの進化と共に知財現場も変わっていくことは間違いないだろう。