特許情報異変
世の中の動きは速いもので、ドックイヤーなどと称されるほど、従来の一年より数倍も速いスピードで進んでいるようです。そんな中、景気対策の方は随 分とゆっくりとして、日経平均が2万円を突破したとのニュースも流れていますが、景気回復が下々までは反映されません。しかし、特許の世界ではスピードが 利いてきた話があります。
この数年、特許庁の審査が随分と早くなってきているのです。特許庁で審査をしてもらうための審査請求をしてから、一年以内に決着を見るケースが出てきています。
特許庁の審査期間は、分野や審査の状況に応じてバラツキがあります。しかし、ある発明を他社が実施している可能性が強いので、急いで審査をして欲しいと いった趣旨で早期審査を希望した場合や、出願と同時に審査請求をしたものの中には、出願から1年を切って登録になるケースが発生しているのです。
早いことは、決して悪いことではありませんので、ある面では歓迎すべきことなのですが、少なからず注意をしなければならない問題も出ています。
発明が特許として認められ、発行される「特許公報」(特許掲載公報とか登録公報とも呼ばれる)は、通常は登録日から2~3ケ月で発行されます。順調に審査 が進んだ場合には出願日から1年~1年半で登録になった特許公報が発行されるのです。この時点では、公開公報は発行されていません。
本来、公開公報は、審査が遅れてしまい出願内容が長期にわたり公表されない弊害で、企業活動を不安な状況に置くことになるのを防ぐ目的で発行されます。つ まり、重複研究や投資を招かないようにという配慮のもとに発行されるものです。したがって、出願から18ケ月経過した時点で例外を除き公報が発行されるこ とになっているのです。ところが先に述べた事情で審査が促進され、公開公報が発行されていない時点で、特許公報が発行されることが発生してきているので す。年間4~7千件は生まれています。
今まで「技術動向や企業の動向を調べるには、公開公報が役立ちます」と様々な機会を捉えて教育や喧伝が行われていました。この点が微妙に違ってくる訳です。
公 開公報が役立つ点は、ちっとも変わりませんが、公開公報だけでは不充分になってしまっているのです。従来は公開公報が発行された後に、特許公報(登録公 報)が発行されることを想定して、仕組みが作られていたのです。ところが公開公報が無いとなると特許公報も併せて調査しなければならなくなるのです。
さらに、事情が複雑なのは、公開公報が登録公報の後から発行される点です。本来の公開公報は、すでに登録になっているものは発行されないことになっていま すが、登録になった後でも公開公報が発行されるような運用がなされているのです。諸説あるのですが、技術情報としては公開公報しか見ていない人があるから とか、登録とは関係なく、時間が経過すると、公開公報発行の準備に入ってしまっており、公開公報が発行されてしまうとのことです。何れにしても、公開公報 発行前に登録されて、既に世の中に周知になっている発明技術があることを考慮して調査をする必要があるのです。