特許の調査
最近のある会社から頼まれて、知的財産についての啓発を行う事が少なくない。
私がこうした啓発教育をする際には、基本的な知的財産についてのお話をした後、ある会社の日用品を皆さんに見てもらい何処が特許データベース何処が意匠で、どこが商標であるかを議論してもらいます。
ところがある会社では、自社の製品を使いたいと言われ、躊躇してしまいました。
この会社、歴史はあるが知的財産が少ないのです。会社の製品のサンプルを頂いて知的財産を調べたところ、ほとんど出ていません。どうしたものかと苦 慮したのですが、逆手にとって、どれほど権利化できる可能性があるか、しかし実際にはほとんど権利化がなされていない実態を把握してもらう戦略に切り替え たのです。
心配したほどではなく、いくつかの知的財産にすべき、または出来る可能性のあるところが、各グループ毎に出てまいりました。そして、当の会社では権利化されていないが、他社発明こんなところを決理にしていますよといった例をお話しして、竿者のセミナーは終了したのです。
今後どうしましょうかと相談を受けた際に、研究開発に携っている人々に、他社がどのような特許を出しているか、権利化しているかを見て頂くことが一番の啓蒙になるというお話をしました。
そして、次回は会社の製品系列のいくつかを取り上げて、その関連分野の特許をピックアップし、それをグループメンバーに割り当てて、一件ごとに内容を把握してもらうことにしたのです。
特許情報の読み方を説明した後に、各自10件の公報を割り当て、その発明の目的と、その目的をどのような形で解決しているかを50~100文字程度 で表現してもらいます。早い話が、どんな課題をどのような工夫で解消しているかという事を、一言でいえばこうだという内容の一件一葉のラベルを書いてもら うのです。
特許情報を読み取った後は、発明を出願日順に並べてもらいます。同じような技術がたくさん権利化されているので、課題ごとにどのような変化があるか、技術開発の傾向というか流れを見てもらうのです。
お客さんのニーズの変化や、ブームというか技術開発にも時代によりテーマも、解決法も変化していることを理解してもらえました。
こうした、他社の特許出願の傾向を見ることは、あまり体系的に行われていません。市販の特許情報の解析ツールは、解析の目的をあまり意識せずに、特 許情報の塊からどんなことが分かるか、動向はこうだとか、各社どんな技術を出願しているかといった、項目や内容を分析することが少なくないのです。
私は、特許情報を塊で大雑把に見ることはあまり勧めません。ある程度はそうしたことも必要ですが、何の目的で公報を分析するかによって、出てくるべきアウトプットや表現は自ずと変わってくることを意識してもらうことを主にしています。