特許の藪
2012年は、少しばかり新興の企業が知的財産を充実に走る話題が目立ちました。近頃はインターネットを媒介にした様々なサービスが、とみに俎上にのります。
特に、アップルとサムスンなどが相互に仕掛けた知的財産を巡る裁判が大きな話題にもなりました。フェースブック、グーグルなどの企業も少なからず特許を取 得していますが、企業の歴史の浅さもあり、まだまだ他社にインパクトを与える知的財産の層の厚さに欠ける意識があるのでしょう。他社の知的財産権購入の動 きが活発です。
化学メーカの友人が、何故電気ではこうした争いが絶えないのかと、調べた結果、「特許の藪」というあまり化学では存在しにくい藪があることが分り、大変な世界なんだねといって教えてくれた表現です。
「特許の藪」は、一つの製品や商品を巡り、多くの企業などが、数多くの特許を各自保有している状態で、2000年代に指摘されるようになったようです。イ ンターネットを媒介としたサービス、携帯電話などサービスの多様化と機能の充実で、どの機能をどの企業が権利として保有しているか、見当がつきにくい状態 を示しているのです。ある種の製品や、サービスを提供する際に、研究開発型の企業だけでなく、製造メーカ、研究機関、サービス提供企業と複雑で多様な企業 が登場して、どことどこに話をつければ製品の提供ができるのか分りにくい状況です。真に互換性が保てないため、藪やジャングルのように入り組んで、特許権 利のクリアランスを済ませてから販売に至るという通常行われる知的財産管理が実行できないか、そんなことをしたらユーザのニーズが盛り上がっている段階 で、製品やサービスができない事態になってしまうという訳です。
私は電気メーカ出身なので、こうしたことは藪とは表現しませんでしたが、当然想定し、他社から知的財産権を巡って文句をつけられたら、対抗できる権利の品 揃えをするしか、リスク回避の方策はないと思っていたし、研究・開発の担当者の皆様にもそうした観点での他社にインパクトを与える権利の取得をお願いして きました。
また、通信規格、信号処理や情報圧縮技術などでは、関係した技術を持ち寄り、お互いの特許を相互にリーズナブルなライセンス料で決着をつけるべく、技術標準化を図る機関も複数登場してきています。
ところが、この標準団体も特許を取得していない企業に対して排他的な取り扱いをしたり、特許になっている技術を規格化して使わせることを推奨すると権利を盾に他社を排除するロックイン状態にしているのではないかという指摘も登場しています。
「特許の藪」状態を防ぎ、「技術の規格化や標準化」を強力に進めることで、仲間以外を排他的に取り扱うとか、新たな機能を排除することが起きてはうまくな いということです。ライセンス料を新規な参入が不可能なほど高額になってしまうということも一種のロックインと指摘されてしまう訳です。
排他的独占権(特許)と、独占禁止法の適用が微妙なバランス(濫用しない)に成り立っている状況が起こっているのでしょうか?