水族館
このところちょっとした水族館ブームだそうです。関東地方でも品川水族館や横浜の八景島シーパラダイスが人気を博しています。近場で手軽なレジャーということでしょうか?魚の動きを見ていると癒されますね。
こうした水族館ブームの中だからか分かりませんが、化学メーカのクラレと玩具のエポック社が1993年に発売した室内を水族館にしてしまう、長寿命風船「お部屋は水族館(アクアルーム)」が人気です。
部屋の中を水族館のようにして魚を泳がそうというアイデア商品です。マンボウや熱帯魚の形をしたビニール風船にヘリウムガスを送り込んで、フワフワと部屋の中を徘徊させるのです。ビニールの魚には上手いことヒレがついていて、バランス良く泳いでいるように見えます。いや泳ぐのです。ガスを充填すると、フワ~と浮きます。そして、天井にくっついてしまうのです。
良く説明書を見ると、重り(バランサー)があるので、適宜付けるようにとなっています。何枚かの重りを付けると中空を泳ぐように適当な位置で浮くのです。そして、部屋の中には何らかの形で気流がありますから、それに乗ってあたかも泳いでいるようになります。いつの間にか、よその部屋に行ったり、二階に離しておいたものが、一階に行ったりと、まるで生き物のようです。部屋の温度にも微妙に反応し、室温が上がると天井にへばりついたりすることもあります。わが家でも一匹飼ったのですが、なにしろフワフワと勝手に移動しますので、夜、暗い所にいたりしてびっくりすることもありました。飼いだして2日目には残念ながら、どこかへ出掛けてしまいました。わが家の狭い水族館よりも広い外の大海を求めて・・・。
このじっとしていなくて、捉えどころのない魚の正体は、クラレが誇る「エバール」(商標登録第782937号)です。皆さんが口にする食品の包装材には必ずといって良い程、使われているのです。はやりのペットボトルやお煎餅の包み紙などスーパーなどで見られる包装材料のほとんどに使用されています。酸素を通さない素材なので、食品の収容に最適といいます。近年はビン詰や壜詰など少なくなりましたが、軽くて、高性能のガスバリヤー性を誇るエバールのおかげです。
正式には「エチレン酢酸ビニル共重合体けん化物」と呼ばれ、クラレが食品包装用に特許を取得しました。特公昭46-21941号「耐気体透過性の優れた食品包装用フィルム・シートまたは容器」で1966年の出願です。現在でも世界の73%はクラレの材料を使っているといいます。
このエバールは素材だけでは捉えどころがなく、別の素材に接着剤でくっつけるか、挟み込んで積層構造にしないと形を成さないといいます。クラレは材料の基本特許を押さえたり、製造方法の特許を押さえたのですが、色々な形にする特許はユーザに取られてしまったそうです。これ以来、新素材の特許には、そういうことが無いよう気をつけているといわれています。