コラム

機械式タイプライター

昔は、一文字一文字を筆記によって記録していました。このような作業を機械的に行い一定の美しい活字の形で、記録する機械がタイプライターです。

タイプライターらしい物の発明が行われたのは1714年1月7日で、イギリスのヘンリー・ミルという技術者だそうです。しかし、その仕組みの詳しいことは分からないようです。実物も図面も残ってなく、ただ「どんな文章でも、印刷したと同じように整然と正確に清書できる」という記録が残っているだけなのです。これは確かにタイプライターのコンセプトではあります。それから100年以上も後になって、1829年にはアメリカで手紙印刷機ができたといいます。機械式のキーボードとタイプ印字ヘッドとインクリボンを使ったタイプライターはずっと後になってからだそうです。多くの人々の工夫や発明の集大成でこうした形が作られたといえます。

タイプライターといえば、印字ヘッドに形成された文字で、リボンのインクを紙に打ちつけます。紙を送る機構と印字の衝撃を吸収して綺麗な文字を押しつけて印刷する形のものが大半でした。この紙を送るのと、印字の圧力を受けるローラーのような部分をプラテンと呼んでいます。ローラーのように丸くなっているのは、紙を移送するのが回転運動で簡単にできるからです。

この円筒状のプラテンは、円が小さいと複雑な文字の印字が均等には行きません。そこで、タイプの印字面をプラテンの凸に合うように、凹面にするというアイデアが、どこかの会社の特許になっていました。こうすれば、印字面が均一に紙に触れるため美しい欠けのない文字が印刷されるというわけです。

タイプライターはどんどん技術開発が進んで、コンピュータの印字・印刷装置にと流れ、現在ではプリンターと呼ばれるようになっています。文字だけでなく、複雑な図形も簡単に印刷できるようになりました。さらにカラーの図形や文字、写真などの印刷にまでおよんでいます。こんな中に、カラーのリボンカセットとリボンガイドをシフトさせて色を切り換える発明がありました。この発明の特許請求の範囲には、プラテンの形状が円筒状と書かれていたそうです。プラテンは丸いものという概念が昔からあり、気にしなかったのですが、この発明の場合にはプラテンは丸だろうと板状だろうと関係なかったのです。現実に他社の製品には板状のものが登場したそうです。

アイデアの基本的な概念にプラテンが丸いことが必須の条件かどうかの検討がなされなかったという反省があり、ある会社の知的財産部門では「丸いプラテン」といって、その構成がその発明に必要なものかどうかをチェックするための合言葉になっています。特許法では、特許請求の範囲の記載は「出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」と規定されています。余分なことを書いても出願人が必要と認めた事項だといわれ、権利の範囲を狭くしてしまうことがあり得えますので、お互いに「丸いプラテン」には注意したいものです。

今はインクジェット方式が主流ですが、戒めのために合言葉になっているのです。

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