樹脂モールド
皆さんが家庭電気用品を数多く使っていることでしょう。機器の中を分解したり、覗いてみる機会は
多くないと思います。先日、電動のシェーバーを買い替えましたが、使い終わったシェーバーは中の
充電式電池を取り出して分別廃棄するようにとの注意書きがあり、ねじを10か所以上も外し、やっとの思いで電池を取り出しました。
捨てることを考えていない設計で、病気で手の力が入らないので、大変苦労しました。
私は色々な機械を分解したりして自分でわかる範囲で修理をすることが多いので、分解は作業は慣れています。しかし一般のユーザーの皆さんが、どこまで分別廃棄を実施できているのかと心配になりました。
その際に、中にあった電気部品を見たのですが、ムカデのような足が沢山でいる樹脂モールドの
DIP(デュアル・インライン・パッケージ)のモノが大半です。全ての電子制御部品が
LSI(ラージ・スケール・インテグレーテッドサーキット)化されていました。
半導体部品が多くの日用品の中に入っているし、半導体部品がなくてはコンパクトな商品も、便利な商品も手に入らない世の中になっています。
私が子供の頃は、ラジオも真空管を使っていました。ガラスの中に封入された真空管です。
壊れた時に差し替えることが出来るようにソケットがあり、そこに差し込んで使うタイプでした。
その真空管がトランジスタと言われる電子部品に変わったのは1960年代に入ってからです。
そしてICになり、LSIに変わっていったのです。
トランジスタの時代には、真空管時代の名残で、外部の回路に信号を伝えたり、動作に必要な電気を供給するための端子は、回路基板に取り付けやすくするために針金状のピンとかリード線といわれる足がありました。
そしてその針金状の足を固定するためにガラスで出来たステムといわれるモノに固定されていました。
当時のトランジスタは、その外側を金属の筒状のキャップで覆っていました。
この金属や、ガラスのステムを使わないで、半導体素子のすべてを熱硬化性の樹脂で覆ってしまえという
アイデアが1964年に出願されました。半導体素子を載せるように先端をつぶしたリード線と、その他の
入出力リード線をゴムからなる指示板の上で組み立て、今川焼きというお菓子を作るような窪みを設けた型の凹みの中に、逆さまにして入れ、液体または粉末の熱硬化性樹脂を封入して、固まったら取り出す半導体装置の製造方法です。特公昭42-21445号「半導体装置の製造方法」で、リード線の変わりに、リード線は打ち抜いた金属の板でも良いとする記載もあり、現在のムカデのようなパッケージを示唆している樹脂モールド形の半導体装置を示唆する基本的なアイデアでした。
ムカデのようなパッケージDIPを示唆するアイデアは、アメリカのフェアチャイルド社の
特公昭41-3094号「電気回路部材包装体並びにその製造方法」があり、1963年3月でしたので、
こちらの方が先で実用的なパッケージでしたが、上下の密封部材でサンドイッチするアイデアでした。