コラム

樹勢回復

春先に野山に咲き誇る黄色いランがあります。ところどころ群生してとても美しいのです。白いランもありますが、黄色を金ラン、白を銀ランと呼ぶこともあり、貴重な種であることを物語っています。

10年以上前ですが、親戚の山の中でタケノコを掘りに行った際に、何株かもらって庭に植えました。数年は芽も出て、美しい花を咲かせましたが、3年目にはほとんど芽さえ出なくなりました。何回か山から採ってきて植えたのですが同じ結果でした。その内に日本でも著名な種苗メーカから、黄ランの苗が発売されました。結構高額でしたが、2株買い求めました。一株は溶けてなくなり一株は見事な花を咲かせました。ところが2年目には芽も出ないで消滅してしまったのです。

こうした経験があり黄ランを庭で咲かせるのを断念したある年に、野草研究家の人が育成した絶滅危惧種の野草を分けてもらったことがありました。その人に黄ランの話をしたところ、最近の研究で、このランは大きな木が枯れた根元にある菌、特定の菌がいる環境を好み、そうした菌があるところでしか育たないという話を伺いました。

キノコなどはそうした特定の菌があるところに育つ種があることを耳にしたこともありましたが、野草にもそうしたモノがあることを知りました。

会津で多く栽培されている薬用人参(高麗人参、朝鮮人参ともいわれます)も畑にいる菌の影響なのか、一度栽培した畑は、何年かは使えないという話を聞いたことがあります。また別の話で落雷があった年はキノコがたくさん採れるとの言い伝えや、バイコフの森と言われる松の木が多く落雷の多い森に高麗人参が良く育つという話もあります。

このように落雷が特定の植物の育成に影響することに着目した技術を開発した人がいます。兵庫県に住む樹木医・宗實さんの発明です。樹木や果樹の根を剪定して新しい根を伸ばす土の中に炭などの電気導体の粉粒を混ぜて土壌を改良し、その土の中に電極を埋め、低電流の高圧を印可して電気刺激を加えることで菌根菌を増殖させ発根を促すというアイデアです。特許第5442068号「樹勢回復方法」です。実際に松やナラの木の枯れ防止に実施されているそうです。

松の木と言えば、青々と茂っていた松が突然枯れてしまう松枯れが話題になって久しいのですが、松くい虫とか、カミキリムシが木の中に侵入してしまい枯れてしまうのです。しかも幼虫が移ってゆくので、大規模な松並木が消滅してしまうこともあるということで問題になっていました。殺虫剤の混入や散布が対策の中心でした。

ところがこちらも雷に打たれ松は枯れずに裂けた幹から青々とした新芽が出る事実に着目して、電撃による松枯れ予防技術が開発されました。特許第3578373号「抵抗性樹木の育成方法」です。樹木の枝と大地の間に間欠的に電流を流して害虫を駆除する方法です。九州電力とエイリツ電子産業の開発した「松護郎」(商標登録第4514614号)として商品化されています。

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