標準規格
標準規格といえば、標準化団体が定める統一された基準です。様々な製品、サービス、システムなどの
品質安定、利便性向上などを目的として定められます。
日本工業規格(JIS)、日本農業規格(JAS)、国際的にはISO規格などが著名です。国だけでなく業界団体などの規格を制定する機関や適用される範囲によって、様々な規格があります。特定の定めがなくても業界の実質的な標準になってしまうデファクトスタンダードといわれるモノも登場します。通信技術は、数十年前まではアメリカのAT&Tが設計した通信装置との互換性が必要であり、基幹通信での事実上の標準はAT&T仕様で、あまり標準をめぐる争いもありませんでした。
ところが無線を使った電話が個人の端末同士の接続になった携帯電話では細かい仕様を規格として、しっかりと決めることが必要になりました。どこの誰とでも、どこのメーカやサービスを使っても繋がることが重要になりました。
このため、複数のメーカが様々な方式を開発しても、その統一を図ることが必要になり業界で集まって標準化団体を作り標準規格を決めることになったのです。そして複数のメーカが独自に開発した技術のどれを標準にすべきかを議論して決めます。
最近の携帯電話やスマホなどの通信手段では3G、4Gなどといった規格が話題になります。
GはGeneration(世代)の頭文字で、5Gと呼ばれる第5世代の通信規格を満たす高速な技術が実用化されつつあります。
現在のディジタル携帯電話の主流がCDMA(Code Division Multiple Access;符号分割多重接続) と呼ばれる無線通信方式で、最大3つの基地局からの電波を受信して最も状態の良い電波を選ぶため安定した通話品質を実現することができ電波状態が悪くなっても切れにくい方式です。
元々は軍事用途向けに開発されたものですが、広く普及しています。その中核となる技術はアメリカのクアルコム社が開発して特許群を取得しています。これらの特許は標準規格に欠かせない必須特許として標準化機関にライセンスを拒否しない旨を届け出るFRAND宣言をして採用されています。
このライセンス契約の中に、実施権を与えられたライセンシーの持つ特許を無償で使わせることを条件にした項目があり、競争相手の排除に該当しないかが争われました。特許の独占権は原則独占禁止法の例外に当たる強い権利ですが、ライセンシーに不当な拘束条件を付け、公正な競争を阻害するような条件を付けたとして争いになったのです。2009年にはこうした制約は排除すべきとの決定がなされましたが2019年になり排除命令は取り消されました。つまり独禁法には違反しないとされたのです。アメリカでは端末メーカにだけライセンスしてクアルコムのモデムチップを独占的に供給する条件が問題になり、チップベンダーにはライセンスしないという行為が反競争的行為と認定されました。未だ控訴されており決着はついていませんが、特許群があっても過ぎた反競争的な行為は許されないことになる可能性はあります。