コラム

明細書

当時、古河電工の中央所長補佐であった椎名直礼さんが、1979年に発表された明細書についての論文からの引用です。[「特許管理」Vol.29 No.5.より]

電線用の絶縁体の開発からスタートしたポリエチレンを用いた架橋発泡体の開発にちなんだ体験の中からの、自らの反省をなんとか他の研究者に伝えたいとの思いで書かれたものです。有効な特許と、明細書についての、ご説は大変に説得力があります。

特許部門の担当者が述べているのではなく、現場の開発研究者の実体験から思い至った結論として参考になると思います。原文のままで、ご紹介させて頂きます。

「研究者は研究した内容を示して、明細書を書くことは特許を書く専門家にまかせれば良いと考えている人が意外に多いようである。事実、この特許の先行技術の明細書でも、そうでないかと思われるものがいくつかある。

そう考えている人は、これらの先行技術の明細書を取り寄せて、その内容を読み直してみてほしい。これらの特許になり得なかった理由は、既に説明したように、

(1) 見出した現象だけで、明細書を書いてしまった。

(2) 他の材料の技術をまねて明細書を書いてしまった。

(3) ある用途の製品だけしか考えなかった。

(4) 技術の一部しか検討しなかった。

(5) 二つの技術の共通点だけ考えて特許を書いた。

(6) 正確なデータなしで特許を書いた。

(7) 一つの製造方法で満足した。

点にあったと思われる。そして、有効な特許になり得なかったと思われる上記の理由は、すべてこの技術の理解の仕方にあまさがあったためであって、明 細書の細かい書き方や表現の仕方の問題ではなかった。従って、これは、データをまとめ、結論を出した研究者の問題であった。このようなことを避けるには、 発明者自身が特許というものを理解して、正確な結論を出し、明細書の原案ぐらいまでは書くようにならなければ、どうにもならない。

それは、学術的研究においては、研究を計画し、実験し、結論を出すまでが研究であるのと同じように、開発研究でも、明細書を書くまでが研究であると 考えてもらわなくてはいけない。少なからざる研究費を使い、明細書の書き方が悪くて研究開発に失敗しては、会社にはもちろん、その研究開発に協力してくれ た人達にも申し訳が立たない。我々の特許が有効な特許になり得たのは、発明者自身がこの明細書の原案を書いたからである。発明者自身明細書を書くというこ とは、特許の専門家が必要でないということではない。専門家には専門家としての経験や独特の知識があり、それは十分に活用する必要がある。」

このように、椎名さんは研究者の立場で、研究開発は特許取得と表裏一体であると述べられています。(論文の引用について、椎名様から許可を頂いております。)

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