コラム

日本人が期待する日本の国家像とは何か

総選挙結果を分析する
先の総選挙では自民党・公明党が圧勝し、立憲民主党が後退するという結果になり自民党の岸田政権は安定多数の国会で順調に滑り出しているようです。
選挙結果は、メディアの事前予想が大きく外れました。事前予想がこれだけ外れた選挙予想は前代未聞です。メディアが行っている選挙前の世論調査は、毎回、実際の選挙結果とは乖離しています。過去の世論調査と実際の選挙結果の間に、どのくらいの乖離があったかを統計的に処理・補正し、次の選挙に当てはめるやり方で予想をしてきました。

今回のような大外れでは、これまでの選挙予想の数値計算は当てにならず、このやり方を補正して見直すことになるでしょう。世論調査のやり方を考える必要性を指摘する声も聞きました。
予想を大きく外した原因の一つに、若い世代ほど与党支持が高く、年齢層が高くなるにしたがって野党支持が高くなるという過去の政治支持層が逆転していることです。

昔は若い年代は革新系支持、年齢層が高くなると保守支持でした。これは重大な逆転現象です。投票率が高くなると与党有利になります。棄権率の高い若い年代が投票すると与党支持が高くなるからです。今までの投票行動・結果が当てはまらなくなりました。なぜ、こうなったのでしょうか。

認定NPO法人・21世紀構想研究会(https://kosoken.org/)は、今回の選挙結果を受けてどのような感想を持っているか忌憚なく語り合うサロンを開きました。その際にいま、政治はどのような課題に取り組むべきか。次のような質問票を配布し、取り組む順位の高い方から、1,2、3・・・・8というように、1から8位までの順位付けをする調査をしました。
このコーナーの読者の皆さんも、是非、優先順位を入れてみてください。

優先順位の1位は将来の国作り
どの施策テーマも重要なものばかりであり、順位付けは容易ではありません。しかし30人の方からの回答を集計した結果は、次のようになりました。
① 現状課題解決でなく将来の国作りを重視する政治
② エビデンス・ファクトに基づく政策議論の展開
③ 政権交代ができる政党政治の実現
これがトップ3でした。
どの課題も、現状の政治に満足しないで不満を持っていることが反映されています。つまり、未来志向型の政治期待ではなく、現状の不満を解消する政治を期待していることになります。これは極めて不安定な政治基盤を示しています。
研究開発の推進、その成果の知的財産としての確保という高度技術開発とハイテク国家を目指してきた日本にとっては、後ろ向きの志向になってしまったということです。
途上国に成り下がった戦後の日本は、国民総力をあげて先進国に追いつこうとするエネルギーがありました。高度経済成長はそのエネルギーの成果でした。その後に続く特許出願王国も、勢いがありました。2002年から知財立国への構築に大きく舵を切りましたが、今思うとその時は退潮の兆しが見えている時代であり、歯止めをかける最後のチャンスでした。しかし、退潮の波を跳ね返すことができなかったのです。

4位以下の政策課題は次の通りです。
④ 二世・三世政治家でない政治家が出てくる社会環境
⑤ 自然科学・工学系バックグラウンドの政治家の出現
⑥ 立法・行政・司法の三権分立が機能する政治
⑦ リーダーシップの強い政治家の出現
⑧ 女性議員の増加で本音が通じる政治現場

投票結果を分析する
さて、30人の会員(全員、世間で言う有識者です)から寄せられた回答の集計結果を分析してみると、次のようになります。これはあくまでも私見になります。
「現状課題解決でなく将来の国作りを重視する政治」を1位にあげた人は9人おり、2位にあげた人は6人でした。1、2位を合わせると15人(54%)にのぼり、半数以上の人が、日本をどのような国にするのか、未来へ向けた国家像、国家観が見えないことを心配していることが分かります。

「エビデンス・ファクトに基づく政策議論の展開」を1位にあげた人は5人、2位は3人であり1、2位合わせて8人は29%でした。しっかりしたエビデンスに基づいた政策議論がないことを憂いています。裏を返すと、政治家の言葉は軽いということにもなるでしょう。
政治家のコメントには「しっかりと取り組む」「全力を挙げて取り組む」という言葉が氾濫していますが、これが企業の平社員の言葉に置き換えた場合、発言者の覚悟のほどが大分違ってきます。

「政権交代ができる政党政治の実現」を1位にあげた人は6人、2位が3人で1、2位合わせて9人(32%)でした。野党はダメだダメだではなく、野党を育てて政権獲得する政党を作ることが重要であることを示唆しています。

女性に期待しない日本の男性?
そのほかの調査結果を分析すると、二世、三世で固まると政治家を目指す有能な人が出なくなり、惰性・世襲政治で停滞することにつながるのですが、意外とそれには厳しくなかったように感じます。二世・三世を選ぶのはあくまでも選挙民の行動であるという別の課題になるのでしょう。
科学が分かる政治家があまりに少ないことにもあまり関心を呼んでいません。中国は科学大国を目指し理系指導者を増やし始めています。以前は、共産党政治局員9人のうち8人が理系でした。
また、日本は三権分立となっていますが、頼みの司法が政治権力と行政に寄り添う判断を示しており、これが民主国家を構築できない最大の問題であることは指摘されてきました。法で律するのではなく、自身の栄達と上司への忖度で判決を下していると批判する法律家の文書は多数出ています。行政も権力者におもねることに重心を移したことは明らかです。
現代の日本人は英雄を求めていない、決断と実行の政治家の出現をあきらめたともとれる結果も出ています。

筆者の最も期待を裏切ったのは、女性への期待が意外と小さいことでした。驚きでした。日本はOECDの中でも女性の社会進出が最も遅れている国家として最下位に近い国になっています。退任したドイツのメルケル首相は、女性の物理学者でした。そのような女性が日本にはいないのでしょうか。
企業経営者では女性社長も出ていますし、政治の世界でも女性は出てきています。しかし国民の期待度がそれほどでもないということでしょうか。女性の考え方は男性とはちょっと違うというのが筆者の考えです。
女性の方が正義感が強く、男性よりは忖度をしないということは間違いないでしょう。いざというときに女性の力が発揮できる場面は多数あります。日本人は歴史的に女性に期待しない民族的な血を持っている国民なのでしょうか。
そのような感慨を抱かせたミニ調査結果でした。

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