コラム

日本の先を行く韓国の営業秘密保護制度

日本の先を行く韓国の営業秘密保護制度
前回、このコラム欄で日本の営業秘密保護制度が甘く、貴重な技術がどんどん後発国に流れていくため、制度強化を提言した。今回は、韓国の営業秘密保護制度を紹介し、韓国を見習うべきであることを提起する。

韓国の弁理士の鄭元基(ジョン・ウオンギ)氏は、ソウルで「NEIT INTERNATIONAL PATENT & LAW FIRM」という特許法律事務所を経営する弁理士である。東京理科大学知財専門職大学院に入学して知的財産の理論と実践を学んだ弁理士だが、昨年、日本の弁理士試験にも合格し、日韓双方の弁理士となった。

ソウルに事務所を構えて知財現場で活動しているが、韓国に活動拠点を置いている弁理士で日韓、双方の弁理士資格を保持しているのは珍しい。その鄭元基弁理士から韓国での営業秘密保護制度について聞いてみた。

韓国の営業秘密の原本を保護し証明してくれる制度
営業秘密は、特許、実用新案などに出願・登録しないで企業内で秘匿するノウハウである。知的財産権として出願・登録すると、その技術内容などが公開 されるので技術そのものが真似される危険がある。実際、公開特許の技術を真似する目的で毎日、組織的に公開情報を検索している外国企業もある。

権利化しないで営業秘密として秘匿していても、たまたま同じアイデアで他社に特許などで権利化されると、今度は権利侵害で自分たちが訴えられる危険 がある。それを回避するには先使用権を認めてもらうことになるが、これもまたやっかいなことになる。そうした事態を避けるための制度を確立した韓国の事情 を聞いたものだ。

韓国特許情報院(KIPI)傘下にある営業秘密保護センター(Trade Secret Protection Center)で、「営業秘密原本証明サービス」を提供している。

この制度は、2010年11月に導入された。

実際の運用はきわめて簡単
実際にどのように運用されているのか、そのあらましの手順を聞いたのでまとめてみた。

まず、営業秘密保護センターのホームページから会員加入をして認証登録をする。この場合、外国の企業であっても会員加入が可能である。

続いて営業秘密保護センターのホームページにログインし、関連プログラムをセットする。

実際に営業秘密を記述した原本(PDF)を登録する場合は、ホームページにログインし、原本証明メニューを選択し、登録する原本電子文書を選択した後、所定の手続きを経て原本を登録する。原本はPDFであるという。

このときに、原本登録確認書、つまり原本の存在と保有期日を立証する文書がホームページのサーバーに収納されることになる。後で必要になった場合 は、登録しておいた電子文書を選択し、 原本登録確認書をオンライン上で確認したり、オフラインで関連書類を発行してもらうこともできる。

このPDFファイルの登録によって営業秘密であることを証明したり、先使用権を証明することが可能となる。鄭元基弁理士は「技術移転や投資などの契約のための交渉をするとき、登録されている旨を契約に入れれば、秘密保持契約などの難しさが解決できる」と語っている。

驚くほど低コストなのも魅力
この登録制度の料金体系を聞くと、驚くほど安い。原本の登録基本料金は、1件、年間、日本円で1000円程度である。

維持料金、割り増し維持料金、提出用原本証明書発行料金などは下記の通りである。

なお、オンライン原本証明の確認は無料である。

韓国ウオン 日本円
原本登録料金 1件/年 10,000 1000
維持料金 原本登録後、保管期間(1年)以内 3,000 300
割り増し維持料金 保管期間(1年)満了後、6ヶ月以内 9,000 900
提出用の原本証明書発行 30,000 3000

さらにこの制度には割引制度がある。登録利用の件数に応じて割引がある。割引率は表の通りである。大企業などは、多くのノウハウを管理しなければならないので、この制度を使って大量に登録することが安全ということだろう。

区分 利用件数 割引率
1 5~50件 -
2 51~100件 10%
3 101~1000件 20%
4 1001~5000件 30%
5 5001~10000件 40%
6 10001件以上 50%

着実にあがる実績
営業秘密原本証明サービス制度が導入されたのは、2010年11月である。そのときから2012年9月までの利用企業は129社であった。

利用件数が制度導入後3ヶ月で1万件を突破したという新聞報道があったが、その後の実績は不明である。2013年にこの制度で原本を証明し、紛争に利用したのは2件あったという。

韓国がこのように低コストで簡便な営業秘密保護制度を構築したのは、日本企業に言わせると機密保持に甘い日本を反面教師にしたのではないかという。冗談に聞こえるが、それは一理あるようだ。

韓国を代表するサムスンなどは、45歳くらいで主たる役職になれない人は会社を辞めることになるという。そのような人材の多くが、最近は中国企業に転職していく。となると技術も人材とともに流出することを考えなければならない。

その面で失敗したのが日本と日本企業である。それを反面教師にしたということなのかもしれない。いずれにしても韓国の知財改革は早い。いまや韓国を見習って日本も営業秘密保護制度を構築する必要がある。

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