コラム

日本が圧倒的に強いトイレ洗浄装置の特許動向

「ウォシュレット」は商標登録されていた

温水でおしりを洗浄してくれるトイレは、日本が世界に普及させようとしている優れた温水洗浄技術を開発した成果である。特許庁が今年の「特 許出願技術動向調査報告」をこのほど発表したが、調査技術の中に「トイレの洗浄装置」というユニークな技術分野があった。そこでこの技術開発について追跡 して見た。

このテーマに注目したのは、日ごろから温水おしり洗浄トイレの便利さに感謝しているからである。日本では家庭からオフィス、デパート、空港などのト イレまで普及している温水おしり洗浄トイレは、例を見ない素晴らしい技術製品であると感心しているのだが、まだ世界への普及の途上にあるようだ。

筆者がよく行く中国の4つ星、5つ星ホテルでは、まだ一度もお目にかかっていない。しかし、いずれ世界中に普及することになるだろう。

ところで、一般にこの温水洗浄トイレを「ウォシュレット」と呼んでいるが、この名称はTOTOが販売する温水洗浄便座の商品名であり商標登録されて いる。TOTOのライバル企業であるINAXの同種の製品は「シャワートイレ」と呼んでいる。しかしここでは最初に普及させたTOTOに敬意を表して、こ の温水洗浄トイレをウォシュレットと呼ぶことにする。

壁にかかっているウォシュレットの操作盤と便座が一体化しているものが多い。

欧米発明のトイレが技術開発では日本がトップ

さて特許庁の技術動向調査だが、今回の調査対象に温水が噴出する局部洗浄装置などに関する衛生洗浄装置の特許調査は入っていない。多分、この技術では日本が圧倒的に強いので除外したものではないか。

対象となった技術は、トイレ内流路の設計技術、節水技術、防汚技術、水供給技術などである。

いまや和式トイレはほとんど見なくなり洋式トイレ一辺倒になったが、このトイレは欧米が先行したものである。ところが技術開発では、いまや日本が圧倒的に強くなっていることを今回の動向調査で分かった。

ウォシュレットの研究開発の過程で、トイレ全体の技術革新をしたために、いつの間にかトイレ技術で世界トップという座を獲得したものなのだろう。

1980年から2008年までの特許動向調査によると、出願人の国籍別の件数の推移では、日本が4779件で断然トップである。欧州各国のトータルでも3614件である。米国は1865件。日本は2000年に380件を記録したが、それ以降は減少傾向になっている。
これらトイレの洗浄技術に関する特許出願では、日米欧韓中とも節水を目的とするものが最も多かった。どの国でも節水が重要であることが分かる。

国籍別出願人の件数の推移
(1980-2008年)

件数
日本国籍 4779
米国籍 1865
欧州国籍 3614
中国国籍 846
韓国国籍

570

その他 613

出願動向で日本と外国ではかなり異なった点がある。日本では出願人の90パーセントが企業からであるが、米国と欧州は60パーセントにとどまり、30パーセントは個人からの出願である。

さらに面白いのは、中国と韓国は60~85パーセントが個人からの出願で残りは企業からだった。中国、韓国では、トイレ製造企業の研究開発は貧弱であり、個人が研究開発に積極的になっているようだ。

特許の登録件数の推移ではトップが欧州の2087件、次いで日本の1539件、米国の1355件となっている。日本は1988年以降に大幅に件数を 増やしているが、欧州はトイレ技術が先行していたために登録件数が多くなっている。2007年以降は出願件数に比べて登録件数が少なくなっているが、これ は出願案件が審査前か審査中であるためと思われる。

論文でも日本が圧倒的に優位

次にトイレの洗浄装置に関する論文発表数を見ると、ここでも日本が圧倒的に強いことが分かる。研究開発で優位に立っている証拠であり、いずれこの基礎研究が実用化でさらに優位に立つことにつながってくるだろう。

論文の発表数
(1980-2008年)

件数
日本国籍 499
米国国籍 46
欧州国籍 88
中国国籍 5
韓国国籍 2
その他 18

日本の研究開発は、トイレの構造から洗浄の効率化、洗浄方式、洗浄水の節約、起動と感知など多岐にわたる技術開発で圧倒的に優位に立っている。これはウォシュレットの開発と実用化に取り組んだ成果が、他のトイレ技術と一体化する形で進展したからだ。

技術開発で優位に立っている日本だが課題もある。国内では需要がほぼ満たされてきたので、今後は海外での展開にかかっている。特に人口の多い中国と インドなど後発国での普及である。中国ではいずれ模倣ウォシュレットが出てくるだろう。いやもう出ているかも知れない。これを許さない特許戦略が必要だろ う。

ビジネスを成功させるには、TOTOもINAXもそれぞれの国に合わせた特性を見極め、ユーザーに受け入れられる製品開発が重要になってくるだろう。それに合わせて特許戦略も重要だ。

また欧米での普及に合わせるためには国際標準化戦略も重要になってくる。

ウォシュレットは米国で発明されたものをTOTOが1960年代に輸入し、その後改良しながら家庭に普及させていったものだ。TOTOでは社員がモニターとなって肛門などの局部洗浄の開発に取り組んだそうで、ついに今日のウォシュレット文化を作ってしまった。

この背景には日本人の清潔好きという気質文化があるかもしれないが、日本企業のあくなき創意工夫が実を結んだということだろう。

この開発努力で是非、世界の標準化となる温水トイレ洗浄を開発して世界を席巻してほしい。トイレ産業で元気になる日本も悪くない。

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