コラム

技術貿易は黒字だがこれでいいのか日本

総務省統計では大幅黒字

先ごろ総務省が発表した科学技術研究調査によると、日本の技術貿易の2015年度は、技術輸出(受取額)が技術輸入(支払額)を大幅に超える黒字で、金額で3兆3472億円のプラスとなった。

グラフは、諸外国・地域から受け取った額と支払った額の収支総計の経年推移だが、2006年からずっと黒字になっている。
(総務省・科学技術研究調査:http://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/kekkagai/pdf/28ke_gai.pdf)

技術貿易とはモノの貿易ではなく、特許、商標、意匠、ノウハウ(企業秘密)などの知的財産権のロイヤルティの支払額と受取額を表すものだ。技術を輸出すればロイヤルティを受取り、輸入すればロイヤルティを支払うことになる。

アメリカからの受取が断トツ

知財のロイヤルティ収益をどの国や地域から日本は受け取っているのか。ロイヤルティをどの国に支払っているのか。それを示したのが次のグラフである。

これで見るように圧倒的にアメリカから得ている収益が多い。アメリカから特許などに代表される知的財産権の権利使用料の収益がそんなにあるのだろうか。

受取額の総額は、3兆9498億円に上っているが、そのうちの約41パーセント、約1兆6000千億円をアメリカから受け取っている。

総務省・科学技術研究調査から作成

一方、特許などのロイヤルティを日本が支払っている国・地域はどこか。これが次のグラフである。

総務省・科学技術研究調査から作成

アメリカへの支払いが約71パーセントの断トツである。その支払額は総額6026億円の約71%なので約4300億円になる。アメリカとの技術貿易は圧倒的黒字になっており、支払いと受取りの差額は、約1兆1700億円となり、巨額の黒字である。

つまり特許などのロイヤルティ収支を日米で見ると、圧倒的に日本がアメリカから特許ロイヤルティをもらっていることになる。

新聞などのメディアや政治・経済界は、日本の技術貿易は年々巨額の黒字を出しているのであたかも日本は技術立国であり、この先も技術で世界を先導するかのような印象を与えている。

自動車産業の親子のやり取りが大半

技術貿易のやり取り、つまり特許ロイヤルティのやり取りをこのように中身を分析してみると、日本産業界と知的財産権の実像が見えてくる。

巨額の受取額の大半は自動車産業であり、その内訳を見るとその約75%が親子間での収支になっている。つまりトヨタ、ホンダなどアメリカで工場を操業しているアメリカの子会社から、日本の親会社に支払っている特許、ノウハウなどのロイヤルティが大半になっている。

総務省・科学技術研究調査から作成

ロイヤルティの内訳をみると、日本の本社が開発して知財権を取得した技術、車体の設計図、製造技術ノウハウなどをアメリカで操業する企業・工場に貸与することで得られるロイヤルティということになる。

確かに立派な収益である。言い換えると、同族企業の内部でやり取りする収益の分配にも見える。これでは本当のロイヤルティ収益と言えるのかという疑問がどうしても出てくる。もちろんこれは知財収益ではあるが、ここで欲が出てくる。

独創的な知財で稼ぐイノベーションが必要

欲がでるという言い方は、独自の技術開発でロイヤルティを取りたいという欲である。つまり系列の親子間でのロイヤルティのやり取りではなく、独自の技術のロイヤルティで系列外の企業から稼ぐことである。

技術輸出で稼いだ額のかなりの部分が、親子間の知財収支で得た額に占められているというのはいかにも寂しい。しかしこの状況には、日本企業全体が気が付いているのではないだろうか。

来たるべき知財立国への踊り場にあるのかもしれない。そう考えないと、日本の長期停滞への序奏ということになりかねない。そういうことを考えさせる総務省の発表データであった。

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