コラム

快眠活魚

活き魚料理といえば高級料亭に多く、生簀を前にして、お刺身などを出されると、新鮮な材料にほっとして、食がすすむというものです。活き作りなどで、鰓がパクパクしているものは余りにも可愛そうな気もしますが、新しいものを食している満足感は大変なもので、やはり美味しく感ずるものです。

しかし、こうした活き作りや生簀料理は、結構高く年中食べる訳には行きません。
料亭の生簀を見ていて、気になっていた事が一つあります。ここに入れられた魚はいつ採られて、いつ頃からここで泳いでいるのかといった疑問です。あまり注文のこない魚は何日も元気よく泳いでいるに違いありません。しかし、餌は何なのだろう、ちゃんとやっているのだろうかと気になります。自然界でダイナミックに泳いでいた魚と、養殖の魚では味が違うといわれる食通もおります。元気に泳いでいても、長いこと水槽に入っていれば、環境も違うので自然界で採れたての魚とは、一味も、ふた味も異なるに違いありません。

あと一つ、蟹がおが屑に包まれて、生きたまま配達されることがあります。これも、餌も無く、水も無いところで長時間いれば、たとえ生きていても身が痩せて美味しくなくなるという話を聞いたことがあります。

こんな悩みを解決して、生きた魚を眠らせ産地から消費地まで運んでしまうアイデアを実践しているのが「おさかな企画」の卜部社長です。「快適に眠った、 活きた、魚」ということで「快眠活魚」と名付けて現在全国展開を図っているのです。

「固定概念を捨てよ」「常識を疑え」・・・をモットーにして発想した結果だそうですが、魚を採れた、その場で眠らせてしまうのです。電気的な刺激や冷凍などとは全く別の概念です。卜部社長が10数年前にテレビを見ていたら、中国の針麻酔の手術があったそうです。また自らも坐骨神経痛になり、鍼灸院で針治療を受けた経験から、魚に針を打ち、眠らせて仕舞おうとのアイデアが閃いたのです。針治療は即効性があり、安全であるとの自らの体験をもって自信を深めたそうです。

活魚の脊髄の機能に損傷を与えることで運動機能を抑制するのです。脊髄そのものを損傷させると短時間で死に至るため、鰓蓋または、側線を目標にして針を打つのが特徴です。魚の種類によって的確な位置が異なるそうですが、鰓や側線を目指して打てば間違いがないといいます。

2005年10月19日に特許された、特許3706879号「活魚の運動機能の抑制方法および抑制処理された活魚の保存方法」です。眠らせてあるので、運搬にも生簀や水槽は不要で、アイスボックスのような小型のものでも運搬できるのだそうです。水温は生きている魚の生存可能下限温度よりも低くすると良いとのアイデアも示されています。これならば、大きな生簀を持った料理屋だけでなく、一杯飲み屋でも活き魚が食せることになり、流通や活き魚の維持管理に革命的な変革を与えることになったのです。「快眠活魚」は<商標登録第4429140号として登録になっています。

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