強い発明
過日、発明の発想についての話をしている時でした。様々な発想方法を紹介しては、やって見せて、さらにはやって頂くというスタイルで進めていたのです。
ちょっとした休み時間をとっていたところ、一人の人が来て、どうも今日の発想法は発明部門がやらねばならないことで、知的財産部門や特許の担当者がいくら発想法を学んでも、発明する人たちにどう伝えて行けば良いか分らないという話でした。
実 はその通りなのです。発明の発想などというものは知財や特許の人が学んだからといって、出てきた発明をさらにブラッシュアップするなどということは、本来 発明した方々がやるべきことですからと申し上げました。発想法を知的財産部門が学ぶということは、発明者に対し、こうした観点でもう少し出てきた発明を拡 充しませんかと提案したり、発想の方法を発明者に指導・アドバイスする方が良いのです。
彼の質問者は、上司の人にわが社の発明はどうも薄くて、小ぶりのものが多いので、強い特許に仕上げる方法を学んでくるように言われたというのです。もちろん、私が説いている発想方法も同じことを目指してはおります。
お話を伺っている内に、もっと基本的なことに気づいていないことが分りました。それは発明者から出てきた発明の素案を記載した原稿を見て、その範囲で何とか強い発明に仕上げられないかと悶々としていた様子が窺えたのです。
私も現役の時分には、そうした経験がありますが、概して発明者の出してきたアイデアだけでは強くて広い権利をとることはできないのです。そこで我々が実行していたやり方をアドバイスしました。
つまり、発明者から出てくるアイデアは、現在の製品に適用した、現時点ではベストの解決方法なのです。しかしそのアイデアに至るまでには、複数のアイデア を頭に浮かべ、実験を重ねたり、検証してこれなら行けるというアイデアを権利化したいといって持ってくることが多いのです。発明者は現時点ではコスト的に 割に合わない、未だそこまでの機能が要求されていない、製品化するには安定しないなど複数のアイデアをバサバサと切り捨て、最良のアイデアを出してきてい ることが多いことに経験上気付いたということをお話しました。
つまり、今回出してきている発明以外に発明者が他に考えたことを聞き出してはどうかとアドバイスしました。必ず同じ課題を解決するアイデアを複数考えているものです。
さ らには未だユーザの要求機能ではないが、将来的には製品に盛り込むことになるかも知れない機能、製品そのものの将来の姿はどうなるか、他社ならどうやって 我々の発明を回避するだろうか、他の技術分野にも応用出来ないかとなるべく広範囲に検討して発明として吸い上げることが、強い・広い権利の源になるという ことをお話ししました。同じ課題であれば、様々な解決手段であるアイデアを発明者から示してもらわないことには到底強い・広い権利は望めませんと申し上げ たのです。これは発想法以前の問題意識というか観点なのです。