尖った個性
2002年11月に成立した知的財産基本法に基づいて15年以上に亘り様々な施策が打たれ、
ある程度の成果を上げてきたことはご承知の通りです。
令和の時代に入り、少し趣が変わってきているなと感じたのが、今年の6月に出された
「知的財産推進計画2019」です。
毎年の各省庁のアクションアイテムが出されるのですが、当初から出されていた、知的財産立国の概念がありました。つまり「研究開発(知的創造)」の成果を出願し、「権利取得(権利設定)」産業財産権を取得して、さらに権利を活用し「研究開発費の回収(権利活用)」を図り、次なる研究開発に充てるという知的財産創造サイクルを回すことで知的財産を生かして技術立国を図るとする政策でした。
こうした知的財産立国を基盤にして更なる発展を促し「価値デザイン社会」を実現するというのです。「価値デザインサイクル」という新しい概念を2025年から2030年に確立したいということを打ち出しました。
価値デザインサイクルは「ビジネスモデル」で、新しい多様な価値を次々に構想,発信し、世界に認められる。
その結果「提供価値」として様々な新しい価値を生み出し、世界からの共感を得る価値デザイン社会を実現するといいます。そして「資源」としては多様な個性が発揮する多面的な能力、日本らしさ、新しい知的財産を資源として整備することで、次なるビジネスモデルを生み出す仕組みを実現するのです。
少しわかりにくい表現が散らばっているので、私なりの理解で見てみます。
第一には「尖った才能を開花させる」との表現が出ました。従来の教育的な施策は平均的な脳力の開発に注がれていて、ともすると平均から見ると個性的な異才は弾き飛ばされてしまいます。この尖った人材が平均に飲み込まれないようにするとの施策です。個々人の他とは違った能力を見出し、チャレンジを促すのです。従来の学校や社会になじめない個性的な人材に、チャレンジする機会を与えるのです。個々人の好きなこと、楽しく思えることを見つけ、気づき、伸ばすところから始めます。従来の評価軸から外れても理解して受容し、マイナスの評価は与えない。失敗も許し、成功確率より挑戦した数を重視するのです。
新規性(着眼点組み合わせ)、進歩性(結果招来の要因分析、クオリティや汎用性の切り口)他の物事とのユニーク差を追求するのでしょう。異能への挑戦を応援することでインセンティブを与えるのです。
第二が「輝く才能の活躍の場、環境整備」です。尖った才能をお互いに結び付かせ、融合して新たなアイデアに至る。多様な個性の融合新結合の加速を図る。ディジタルアーカイブ社会の構築で文化の保存、承継、コンテンツ融合の場を振興するのです。
第三が「共感を得て価値として実現」です。日本からのアイデアが世界で共感できるようにするのです。
尖った能力を融合して生まれた何かを世界に問うのです。
今までとは違った、創造性の底上げ政策へのシフトが始まると見ました。