好み
好きだの、嫌いだのというのは、色恋の世界だけでなく、人間の欲の範囲ではあちこちで出てきます。昔から五官(五感)といわれる、眼、耳、鼻、舌、身に対応する五境があり、色、声、香、味、触、それぞれに欲があるといわれています。
仏教研究家の高神覚昇師は、これらの欲を二つの句で説明しています。
「 眼 に は 青 葉 山 ホ ト ト ギ ス 初 鰹 」
「 衣 更 え 手 に つ く 藍 の 匂 い か な 」
初めの句では、眼には青葉ですから、眼です。眼で青葉という色の世界を認識するのです。そして山ホトトギスが耳の世界でホトトギスの一声を聞く、そ して初鰹は舌の世界を示しており、味の境界を表現していると説いておられます。この句では眼と耳と舌の三つの世界と、色と声と味の三つの境界を表現してい るというのです。
二つ目の句では、衣更えというので、身体に触れる衣で身の世界と触覚の境界を示し、手につく藍の匂いで、鼻の世界で香りの境界を表現しているとしています。
二つの句が五官、五境を見事に表現しているのです。
仏教では、こうしたものも一切無い「空」だとしているのですが、われわれ凡人は五境すべての欲を常に満足したくてしょうがないのが現実です。これら を意識して満足することを「食(じき)」と称しています。眼にも、耳にも、鼻にも、舌にも、身にも食物が必要なのが現実でしょうか。
こうした感覚は、人によって好き嫌いがあり、様々な好みが出てくるものです。とくにわれわれが一般にいう食べ物、つまり舌の世界の、味の境界ではこうしたことが激しい分野ではないでしょうか。
10種類のおせんべいやら、豆やらが入っている「味ごのみ」は、まさに、様々な好みを満足するというコンセプトでつけられた名前なのでしょうか?
わたしも時々食べていますが、色々な味が楽しめて良いですね。「味ごのみ」は1990年に商標出願がなされましたが登録にはなっていません。「ブルボン/味ごのみ」はお菓子などの食品の分野を指定して商標登録第4924770号になっています。
「味ごのみ」のヒットで気を良くしたメーカは、シリーズ化を図ったのが「好み」シリーズです。柿の種とナッツを5種類入れた「柿種5の味」(かきだねごのみ)、揚げたせんべいなどを5種類入れた「揚好み」(あげごのみ)を出していました。
2003年には「コミックごのみ」という味ごのみにコミック本のおまけをつけた商品まで発売しました。1980年代にヒットしたコミック本(キャプテン翼、キン肉マン、魁!!男塾など)を付けて、250円で販売したものです。商標登録第4774262号として登録商標になっています。
最近は見かけませんが、ネットでは、コミックごのみセットとして8種類のセットが売られていました。(注)としてお菓子は賞味期限が切れていますので、本のみご鑑賞くださいとありました。